27、王都の現状
ジャミの言葉にトムは怪訝な顔をする。
「聞くこと聞くが、内容によるかな。」
レイは内容を聞いてから判断するようだ。
皆の注目を集めながらジャミは立ち上がり、得意げな顔をしながら咳ばらいをした。
「おほん。それでは。今シュミム王国内がどうなってるか知ってる?」
「報告は入ってるが。」
「聞いてるよりもヒドイと思うよ。」
ジャミはさらに話を続ける。
「王都内からまともな人は逃げ出して、ほとんど貧民街になってる。」
「前奴隷買いに行ったときは、それほど変わりなかったが。」
レイは少し前に奴隷を買いに王都にレイナとして行った。
その時は以前と変わりなく、門から続く大通りは賑わっており綺麗な店が立ち並んでいたと記憶している。
「大通りだけだよ。裏通りはもう物乞いばっかだよ。スミスの店も無くなってる。」
「マジかよ。」
スミスが大きく目を見開いた。
スミスが裏通りで商いをしていた店は、既に廃墟となっているそうだ。
「そこで人集める。奴隷になる条件付きだけど。」
「集まるのか。」
自ら進んで奴隷になる人間はいない。
奴隷になるということは、人間では無くなるということだ。
自分の人生を自分では決められなくなる。
「そこで、チルの出番だよ。」
「えっ僕?」
「知り合いに声掛けてほしい。」
「奴隷になれって。」
「正確に言うと、食い扶持に困って奴隷売りを考えている人を教えてほしいって。」
困り顔のチルにレイは説明する。
「奴隷に売られる前に直接買うと。」
「そういうこと。リスクはあるけどね。」
「うーん。」
確かに奴隷商に売られる前に直接買うことが出来れば安上がりだ。
だが、貧民街でチルがそれをやって衛兵に目をつけられても困る。
レイが決めかねていると、スミスが静かに言った。
「俺がその役やろう。」
「良いのか。」
「俺の方が顔が広いしな。一応商人ギルドに奴隷商の届け出をすれば捕まらねえはずだ。」
スミスは商人ギルドに属し、王都で武器屋をやっていた。
チルよりも顔が広く、奴隷も集まりやすいかもしれない。
「頼めるか。あとチルとジャミ、一緒に行ってくれ。」
「はいっ!」
「俺もかよお。」
ジャミがごねるのでレイが説明する。
「ジャミは情報集めて警戒してくれ。捕まったり襲われてはマズい。」
既に王都には奴隷商がいる。
スミスの活動を妨害される可能性があるため、ジャミには諜報活動をしてもらいたい。
スミス・ジャミ・チルの3人はキッコーリ町近くの転移魔法陣から王都へと向かった。




