26、規制
ポッタが困ったように揉み手をしている。
「申し訳ございません。さすがにもう。」
「良いよ。仕方ない。今までありがとう。」
「こちらこそ。今後また機会があったらお願いします。」
「うん。また。」
「はい。」
レイはポッタと握手をして彼を見送る。
そして家へと戻ると椅子に座りため息をついた。
「どうしたんすか。ため息なんかついちゃって。」
トムがお茶を2つ用意して部屋に入ってきた。
「もう奴隷を仕入れられないってポッタが言ってきたんだ。」
「ダメなんすか。」
「うん。奴隷の値段が高くなってね。」
「…俺たちのせいっすね。」
「…そうだな。」
レイたちはポッタを通じてシュミム王国の奴隷を買っていた。
最初は値段の安い体の一部が不自由な奴隷や老人、子供を。
次に性奴隷や戦闘奴隷をと、1000人以上買い集めた。
その結果奴隷の値段が高騰して、さすがに買えない値段になったのだ。
また、ポッタが買い漁っていることがバレたのか、アウドの町の衛兵がポッタの家に来た。
ポッタの身の安全を考えると、これ以上彼に迷惑はかけられない。
奴隷購入を断念することを決めた。
「どうするんすか。」
「そうだな。久しぶりに皆を集めようか。」
その日主要メンバーをレイの家に集める。
レイ・トム・マール・スミス・ロックウッドのメンバー・ジャミ・チル・カンタ・アカニの他に、タリカにも集まってもらう。
「じゃ、まずは皆の近況を教えてほしい。」
「ダンジョンは順調っすね。拡張してますし。贅沢言うならもっと欲しいっすね、ダンジョン。」
ダンジョン管理を任されているトムが最初に答える。
「ダンジョンコア探しはレイも知ってるだろうが、行き詰まってる。シュミム王国はほとんど取りつくしたんじゃないかな。アッカディー王国で探すしかない。」
ダンジョンコア探し兼レイの警護担当のロックからの報告だ。
「それについては兄貴から情報を貰ってる。早めに4つ潰してほしいダンジョンあるから来てくれと。レイはまた女装してレイナとして同行してくれ。」
タリカはレイのためにレイナのEランク冒険許可証を発行していた。
アッカディー王国に密入国したレイが活動するには、レイナに変装するしかない。
「宿屋は順調です。3件目の宿作りたいんですが。」
アカニからの要望だ。
シュミム王国特産の大木を買うため、結構な数の商人や護衛の冒険者が行き来する。
アウドの町にある宿は高いため、タリカ領内の宿屋の人気が高くなっている。
順調に2軒目の宿を建てたが、宿で使用する水を確保するためには水用のダンジョンを近くに作るしかない。
だが、ダンジョンコアが不足しているため3軒目が建てられないのだ。
「やっぱり町を大きくするにはダンジョンコアしかないか。」
「そうだな。アッカディー王国内で取る方向で行こう。」
ダンジョンコアを集めつつ、町とダンジョンを大きくする方向に変更はない。
「で人の方は。」
「奴隷の教育と配置は順調ですぞ。ハリナという奴隷をトム様のサポートに付けてます。」
「町を大きくするにはもっと人が必要だね。」
教育係のカンタとチルが報告する。
「そのことなんだがな。」
レイは皆に奴隷がもう購入できないことを伝えた。
「そうすると町を大きく出来ないな。」
スミスが眉間に皺を寄せている。
「どうするのかい。ようやく儲けられるようになってきたんに。」
マールが言うには、町の収支が黒字になったそうだ。
宿屋の儲けだけではなく、ダンジョンで得た素材で余った物を売りに出している。
商人の中にはダンジョン素材目当てでやってくる者もいるくらいだ。
「アッカディー王国には人期待できんぞ。」
タリカはアッカディー王国内での人集めは難しいという。
奴隷の売買に厳しい規制がかけられている上、タリカを快く思っていない貴族たちから妨害を受けるからだ。
皆で思案する中、手持ち無沙汰でキョロキョロしていたジャミが突然口を開いた。
「人集め良い案あるんだけど、聞く?」




