25、挫折
ジャミが四つん這いになって号泣している。
その隣でレイも四つん這いになって号泣していた。
さらにその隣ではアレスが力なく転がっている。
「終わった…。」
ジャミは一言呟くと嗚咽した。
レイが毒の森から採取してきたカカオとコーヒーの実が、1日足らずで干からびてしまった。
程よく発酵することも無く、乾燥することも無く。
2人にとっては最後の希望だった。
以前ジャミがニンニク攻撃を放った後、2人はミナにコッテリと怒られた。
ミナが言うには、
「臭いのは斥候として失格。」
だそうだ。
斥候は敵に気付かれることなく情報を収集したり、奇襲攻撃を仕掛ける役割がある。
だが、臭いを放っていては敵に容易く気付かれてしまう。
自分は関係ないと思っていたレイだが、剣士や魔法使いも戦いの際に奇襲攻撃が使えなくなるため、臭いはご法度だそうだ。
酒は良いのかと抗議したが、酒は深酔いするほど飲まなければ大丈夫らしい。
女でも香水を使わないのにと、ミナをますます怒らせてしまった。
それでもとコッソリ少量の玉ねぎと肉を食べた翌日、レイたちはアレスを連れてキングウルフのところに行った。
キングウルフはレイたちを見るなり般若のような顔になる。
「何だ!その匂いは。臭いぞ!」
「…あんたたち、食ったね。」
ミナも般若のような顔でレイたちを睨む。
「お前も何だ!気づかなかったのか!」
キングウルフの怒りは自分の息子であるアレスにも向けられる。
「クウン。」
アレスは小さく鳴いて縮こまってしまった。
「ええい!お前らの根性叩き直してやる!」
そこからの記憶はレイにはない。
後でサクソウから聞いた話によると、キングウルフに魔力が尽きるまで魔法を撃たされた挙句、キングウルフの攻撃を足腰立たなくなるまで避ける訓練をしていたそうだ。
誰かが倒れたらサクソウの回復魔法をかけ、日が暮れるまで訓練は続いた。
その様子を遠くからハイオーガ2匹が眺めていた。
「ウガ。」
「ウウゴ。ガウガ。」
何か怯えた様子で会話している。
2匹はレイたちを襲うことなく森の奥へと帰っていった。




