19、カカオとコーヒーとネギとアレ
タリカがレイの異変に気が付いた。
「どうした?レイ。」
レイは返事もせずに赤いフットボールの実がなる木に駆け寄る。
赤い実をどんどんもぎ取り、魔法袋の中に入れていく。
「ああ、レイの気が狂っちゃった。」
ミナが叫び、ゴザが止めようとした。
だがレイは無我夢中で実を採っている。
「どうした。正気なら説明しろ。」
ロックもレイを羽交い絞めにして説明を求めている。
「皆!知らないのか!カカオだ!」
ロックたちを振りほどき、目をランランと輝かせながら赤い実を全て取る。
他にも無いかとキョロキョロしていたレイは、別の赤い実を見つけてスキップしながら近寄っていった。
小さくて赤い実で木にびっしりと付いている。
レイは一つ手に取り中を割ると、中から大きい茶色い種が出てきた。
匂いを嗅いだレイは、種の部分を少しかじる。
「おい!」
ロックが慌てて止めようとする。
「うわあ。これコーヒー!コーヒー!」
先ほどと同じように赤い実を高速で採取していく。
コーヒーの実を採りつくすと、レイは奥に進んでいこうとした。
「レイ!ダメだ!奥行くな。」
ロックとゴザが再び止める。
体を完全に拘束されて視線を上へ下へと動かしていたレイは、地面に生えている細長い植物に注目した。
「ネギだ!」
再びロックたちを振りほどき、レイは地面に這いつくばる。
5本程生えているネギを引っこ抜き、根が茶色く大きく膨らんでいるのを見て喜んでいる。
理解が出来ず完全に固まっているロックたちを尻目に、すぐそばに生えている別の植物がレイの目に留まった。
ネギに似ているが、引っこ抜くと白い小さな根が出てきた。
形はトムがひそかに履いているかぼちゃパンツに似ている。
「こっこれ!ニンニ…。」
笑顔でロックたちの方を振り返るレイだが、
「うおおおおお!」という雄叫びと共に突進してきたゴザに、森の外まで連れ去られてしまった。




