16、マールのへそくり
レイとトム、マールが暮らす大きな建物に、主要メンバーが集まった。
レイ・トム・マール・スミス・ジャミ・チル・カンタとロックウッドの面々だ。
領主であるタリカとタック・フクン・アレスもいる。
「じゃあ、始めようか。」
レイは皆を見渡した。
「大体の方針は決まったと思う。」
「どんな方針か聞かせてもらえるか。」
タリカが今後の方針を確認する。
「まず、物資の調達はダンジョンを作ってする。そのためにダンジョンコアが欲しい。」
「うん。だが残念ながらアッカディー王国は野良ダンジョンが少ないんだ。」
タリカ曰く、野良ダンジョンが出来ても、王国騎士団により直ぐに管理下に置かれるそうだ。
「潰したいダンジョンがあったら情報が欲しい。」
「分かった。国王に話しておくよ。」
異母兄である国王に話をつけると言う。
「ライバ・ドイン・キッコーリ町長とキングウルフさんに、野良ダンジョンがあったら教えてくれと言ってる。」
「それで5個見つけたのか。凄いな。」
キングウルフに教えられて3つ目のダンジョンを見つけた後、ライバ領とドイン領でそれぞれ1個ずつ野良ダンジョンを見つけている。
野良ダンジョンを見つけてダンジョンコアを獲得することは今後も変わらない。
「ダンジョンコア見つけたら、次は何作るの?」
ミナがワクワクしながら聞いてきた。
「私ゃ薬草とかがもっと欲しいね。」
マールの希望だ。
「俺は金属が欲しい。武器が不足していてな。」
スミスも負けじと希望を言う。
『お魚食べたいにゃー。』
タックとフクンは魚が食べたいそうだ。
「人はどうする?アッカディー王国内から希望者募るか?」
ロックはアッカディー王国内から移住者を募りたいようだ。
「それなんだがな。」
レイは険しい顔をする。
「実はシュミム王国内がヒドイ有様で。」
「どういう状況だ?」
「税の取り立てが厳しくなっているんです。夜逃げや奴隷落ちが増えてるんですよ。」
シュミム王国内の状況に詳しいカンタが説明を始める。
ライバ領やドイン領は比較的緩やかだが、元々税の取り立てが厳しいアウド領内が悲惨な状況らしい。
村だけではなく潰れた町もあるそうだ。
「今回のようにシュミム王国内で奴隷を買うと。」
「それが良いと思います。まとまりが出ますし。」
トムも賛成のようだ。
タリカは上を見ながら何か考えている。
「確かに。アッカディー国内から人を集めるのは邪魔されるかもな。でもシュミム王国から人をかき集めるのも何か疑われそうだ。」
「その時には俺のことを言うしかないかも。」
「そうだな。兄さんにだけレイのことコッソリ教えておくか。」
考えているうちに自分の立場を忘れたのかタリカが自国の国王のことを兄さんと言う。
タリカが言うには仲は悪くないそうだ。
「じゃあ、物資と人の方針は分かったが。」
タリカは話を続ける。
「金はどうする?奴隷買うにしても、足りないもん買うにしても要るだろ。」
今はタリカの恩情によって税金が免除されているが、今後拡大すると納めなくてはならない。
何より物資も人も足りないため、資金をどうするかを考える。
「冒険者として依頼受けて稼ぎますか。」
トムはBランク冒険者として依頼を受けるというが、レイ以外に奴隷たちをまとめる役目の人間が必要なため、トムは中々町を離れられない。
奴隷ではない人間は、レイの他はトムとマールだけだ。
「ロックたちを解放するか。」
「まだ早いんじゃないか。」
「そうね。犯罪奴隷をすぐ解放するのはやめた方がいいわ。」
ロックウッドの面々から解放を拒否される。
じゃあ、どうやって金を稼ぐかと皆で考える中、マールが不敵な笑みを浮かべながら、ずいっと前に出た。
「ようやく私の出番だね。」
マールはそうつぶやくと、持っていた魔法袋から宝石や金塊を次々と取り出した。
「マールさん、それ。」
レイは震える手でお宝を指さす。
そういえばあの時4つしか出してなかったような。
「私のへそくりさね。」
「あっ!それっ!ペガル…。」
マールは何かを言いかけたジャミに空手チョップをくらわし気絶させた。
「勘の良いガキは嫌いさね。」
マールはニヤリと笑った。




