5、はからい
「しっつこいですな。」
半ばキレ気味にトムが側にいた兵士に圧をかける。
だが兵士はニヤニヤして黙ったままだ。
見ると以前レイとトムから装備を巻き上げた、元Cランク冒険者だ。
レイたちが出奔した翌々日、ドインたちがキッコーリ村にやってきた。
レイを出せと言われたため、既に村を発ったことを伝えると、ドインと入れ替わりに見張りとして兵士たちが王都から派遣されてきた。
トムたちがレイと接触すると思われたらしい。
トムと奴隷たちが辺りの森で魔物を討伐していると、ピッタリとついてくる。
鬱陶しいことこの上ない。
1週間ほどトムたちはキッコーリ村に滞在しているが、全員我慢の限界を迎えていた。
「どうしたもんですかね。」
「あいつらどうにかしないと行けないわね。」
レシーアも顔をしかめる。
女奴隷たちに卑猥な言葉をかけるため、全奴隷から兵士たちは嫌われていた。
側で髪をいじりながら聞いていたジャミが口を開く。
「…良い案あるんだけど、乗っかる?」
「内容によるな。」
いまいちジャミを信用していないトムが慎重に答える。
全員でコソコソと打ち合わせをした翌々日、トムは奴隷たちを連れていつものように森へと出かけた。
オークなどの魔物を討伐するためだ。
いつも通り魔物を粛々と倒していたが、突然森の奥から咆哮が聞こえてくる。
複数の重い足音と共に、ハイオークが5匹襲い掛かってきた。
奴隷たちが必死に武器を振るい、迎撃する。
「大変!オークの村が出来てる!キングオークいた!」
「何だと!」
森の奥から出てきたジャミが叫んだ。
トムはまたオークの軍勢が攻めてくるのかと、絶望の声を出す。
元Cランク冒険者の兵士は青くなると、脱兎のごとく逃げ出した。
つられてトムたちを見張っていた他の兵士たちも慌てて逃げ出す。
兵士たちが見えなくなると、トムと奴隷たちは簡単にハイオークを切り伏せ、走ってキッコーリ村へと向かう。
村の前ではマールとスミスが既に出発の準備を終えていた。
「行くよ。」
「ああ。」
村に残っていた奴隷たちも合流し、東に向かって走り出した。
「上手くいったね。」
マールがねぎらいの言葉をかける。
「トム演技下手だったけどね。」
ジャミは余計な一言を発した。
ジャミがトムからお仕置きされたのは言うまでもない。




