2、タリカの町?
レイはタリカの町を見渡した。
草1本生えていない荒れ地が広がり、その地を覆うほどの岩山が両脇に連なっている。
幅が狭いかわりに奥に何があるか分からない程、奥行きがある。
巨大な長方形のような形をしているようだ。
驚いたのは『町』といいながら1つも建物が無いことだ。
草木も生えておらず、岩や石も無く、ただの荒れ地が広がっている。
「これが町なのか?」
「そうだ、これが俺の町だ。」
仕事モードが続かないタリカが自分のことを俺と言い始めた。
「何にも無いが。」
「砦はある。」
「それだけじゃんか。」
「いいだろ。思う存分好きに自由にやってくれていい。」
「あのなあ。」
「いつまでも居ていいぞ。」
「何も無いのにどうやって暮らすんだ。」
「お前がいる。」
タリカはレイをビシッと指さす。
「本当に好きにして良いんだな。」
「文句は言わない。男に二言は無い。」
タリカは部下を従えて、踵を返して砦に入ってしまった。
横をかなりのスピードで商人の馬車が、アッカディー王国の隣の領へと向かって走っていく。
「とりあえず俺たちも隣の領行くか。」
何も無いところに住み続けるのは難しい。
レイは隣の領に行くことを提案する。
ロックは気まずい顔をしてミナと顔を見合わせた。
「言いにくいんだが、レイ。」
「嫌な予感するんだが。」
聞きたくないというようにレイは首を振る。
「俺たち密入国だから、隣の領に行けんぞ。」
「嘘だろ。」
隣の領に行けず、シュミム王国にも戻れず、レイたちは閉じ込められてしまった。




