1、ようこそ
星空の下、3人が軽快に街道を走る。
「夜に移動すんのか。」
レイが素朴な疑問を口にする。
昼、明るい時に移動した方が速いからだ。
「人に見られるとマズいからな。町にも連絡いってるだろう。邪魔されたくない。」
移動の邪魔をされたらドインに追いつかれる恐れがある。
夜のうちに移動して、人目につく時間は仮眠を取るそうだ。
眠いとグズる3匹をなだめながら走り続ける。
夜が明けると森の中に入り走り続けた。
冒険者が活動する時間になったら森の奥に入った。
岩山に似せたドームをレイが作り、中で仮眠を取る。
夕方頃起きてまた走り出す。
そんな移動を続けて5日目、遂にアウドの町にたどり着いた。
既に国境の砦は目の前だ。
「一気に砦の中に駆け込むか。」
レイは全力で砦に逃げ込むことを提案する。
「いや。タリカに迷惑がかかる。他国の勇者を匿ったってな。」
「じゃあ、どうすんだ。」
「こっちだ。」
ロックが手招きする。
レイたちは大きく南に迂回して、砦と一体化する岩山の麓に来た。
「ここだ。」
見ると人1人が屈んでやっと通れるくらいの穴が開いている。
「これ通ってアッカディー王国に行くのか。」
「そうだ。」
「砦の意味は。」
「無いな。」
「…。」
何で砦がと思ったが、荷物が多い商人はこの穴を通れないため、砦を通るらしい。
また、周辺はオークなどの魔物も出るため、安全にアッカディー王国と行き来するためにはやはり砦を通るそうだ。
この穴を通るのは戦える犯罪者だけで、知る人ぞ知る抜け穴らしい。
先頭をミナ、3匹が続き、その後ろをレイ、最後尾をロックが四つん這いになって進む。
「見えてきたよ!」
ミナの元気な声で前方を見ると、光が薄らと差し込んでいた。
「わああい。」
ミナが元気に飛び出していく。
レイたちが続いて抜け穴から這い出ると、笑顔のタリカが部下と共に待ち構えていた。
「ようこそ!私の町へ!」
元気よく出迎えるタリカの後方には、草1本生えていない荒れ地が広がっていた。




