104.逃亡
「説明してくれ。」
さすがの元Aランク冒険者である。
直前まで酔っぱらってバカ騒ぎをしていたが、急に冷静になっている。
その他の4人も冷静に荷物をまとめながらトムが話始めるのを待っていた。
トムはレイが勇者だったがステータスが低いため城から追い出されたことや、大臣の調査で優秀だったことが判明し、3匹と共に捕縛命令が出たことを説明した。
「マズいな。ドインが来んのか。」
説明を聞いて、ロックも荷物をまとめ始める。
「レイ、3匹を起こしてきてくれ。トムは奴隷に魔法袋に食料や水詰め込んで用意するように言ってくれ。俺とミナが同行する。」
「全員で。」
トムは言いかけたが、ロックに制止された。
「全員だとドインに追いつかれる。俺たちはドインに確実に負ける。」
「速さ重視で行くんだね。」
ミナが補足する。
「あと索敵な。戦いは避けたい。」
「OK。」
既にミナは準備が出来たようだ。
マールとスミスも役立ちそうなものをかき集めて魔法袋に詰めている。
「なんにゃあ。」
「眠いにゃあ。」
「クウン。」
3匹もレイに起こされて部屋に入ってきた。
トムは奴隷全員を起こして食料と水をかき集めて魔法袋に詰め込む。
「これ持っててください。」
「これも持ってきな。」
「これには万が一考えて、予備の装備やら入っている。」
トム・マール・スミスは役に立ちそうなものを詰め込んだ魔法袋をロックに渡す。
「そうだ、これ。作ったんです。」
トムは懐から自らが作ったおんぶ道具を出した。
タックとフクンとアレスを同時におんぶできる。
嫌がるレイに無理やり装着して3匹を押し込んだ。
ロックが準備が出来たことを確認して言った。
「じゃあ行くぞ。」
「夜だぞ。」
「そうだ。だから行くんだ。」
トムに半ば抱きかかえられるようにして、レイは村の外に出た。
3匹と3人でアッカディー王国を目指す。
「レイさん、自分も必ず行きますから。絶対行きますから。待っててください。」
躊躇するレイを押し出すようにしてトムが約束する。
「絶対だぞ。」
「約束です。」
レイとトムは拳を突き合わせ、星空の中、レイたちは東に向かって走り出した。




