101.村長の悩み
「よお来たのお。」
村長が3人にお茶を出す。
中々の値段がするのか、香りのよいお茶だ。
「お久しぶりです、村長。」
レイが話始める。
「どうしたんか。ここに腰を据えるんか。」
「ちょっと近くに用がありまして。村長に頼みたいこともあって立ち寄りました。」
「おっ、なんじゃい。言ってみい。」
「はい。実は、ロックウッドも含めて、奴隷全員を解放しようと思ってます。」
奴隷解放の話はトムにも話していない。
トムは驚いた顔をしている。
「どうしたんじゃ。何かあったんかい。」
「旅をするうちに、もっと自由に動きたいと思って。他の国にも行きたいですし。」
「それでここでということじゃな。」
「はい。それでここを解放した奴隷たちの拠り所にしてほしいと、お願いしたいです。」
「そうか。」
村長は少し難しい顔をして、腕組みをしている。
「ダメですか。」
「ちょっとお前さんに頼みたいことがあってな。それに関連しとるんじゃが。」
「頼みですか。」
「実はな。もう村が手狭になっててな。」
詳しく話を聞くと、近隣の村や王都から移住希望者が殺到しているそうだ。
オーク襲撃の影響で、簡単になだれ込まれた王都よりも安全だと思われているらしい。
また王都よりも賃料が安く、店を構えたいという商人も多いそうだ。
「だから保管庫を店に。」
「もう中心の建物はいっぱいでな。それでも店をやりたいと言われてな。」
更に王都管理長から町への昇格の話が来ているらしい。
町に昇格すると、入場料を取ったり衛兵を雇うことが出来る。
また、冒険者ギルドと商人ギルドの支部が置かれ、職員が常駐する。
町に昇格するとメリットもあるがデメリットもある。
今まで物品で納めていた税金を、全てお金で納めなくてはならない。
町に昇格後、安定した収入を得るためにも、もっと村を拡張したいそうだ。
「じゃから、外側にもう1つ防壁を作って欲しいんじゃ。そこに畑を作って、一番内側に店と家を作りたい。報酬は出すぞい。」
「報酬は有難いですが、俺の奴隷たちを受け入れてくれたら要りません。」
「良いのか?」
「はい。お役にも立ちますよ。ドラゴンやオーガも倒せますし、鍛冶が出来る奴もいます。読み書き計算は全員出来ます。あと、体が欠損している人の治療もします。」
「ほう。凄いの。レイは頑張ったんじゃの。」
村長は目を丸くして驚いていたが、その後笑顔になった。
レイの頑張りが分かったのだろう。
翌日から拡張に取り掛かるとレイは村長に伝えた。
笑顔でレイと村長が握手する中、トムは難しい顔をしていた。
その後レイはトムから酒を飲もうと言われ、夜になり2人で防壁の上に座っていた。
「この酒。」
「買いましたからね、これ。婆ちゃんからは盗んでません。」
トムは毎度毎度マールから酒は盗まないと言う。
満点の星空の下、2人はグラスを傾ける。
無言で酒を飲んでいたが、突然トムが話を始めた。
「レイさん。」
「何だ。」
「止めません?復讐。」




