100.キッコーリ村再び
キッコーリ村を発って4か月、ドインの要塞を出発してから1週間後、再びキッコーリ村に戻ってきた。
門番をしていた男が驚いたようにレイに駆け寄る。
「お帰んなさい。レイさん。トムさん。直ぐ村長呼んで来ます。」
「いや、こっちから行くよ。」
「今村長、木こり亭の食堂にいますんで。」
「分かった。」
ロックウッドと奴隷たちに休憩するように伝え、トムとマール、スミスと一緒に木こり亭へと向かう。
「お前さんたち!久しぶりじゃのう!」
相変わらず逆立った髪の毛で、おたまを持ったエプロン姿の村長が走ってきた。
「お久しぶりです、村長。元気でしたか。」
「元気じゃあ。ノムも元気だし、トモさんとリーツさんも元気じゃよ。エラも頑張っとる。」
エラの名前を聞いて、元師匠のスミスがソワソワし始めた。
「スミス、行っていいぞ。」
「おお。マールさんの店貸しとるぞ。」
「すまねえ。行ってくる。」
スミスはエラが切り盛りする店へと走っていく。
「積もる話があるじゃろうが、ちょっと後でええかの。」
「分かりました。俺たちも外で昼飯食ってます。」
「ああ、1時間くらいしたら家に来ておくれ。」
村長は再び激混みする食堂の奥へと走っていった。
キッコーリ村はもう町と呼べるくらいに活気がある。
レイが来たばかりのころは、食堂兼宿屋が1軒、よろず屋1軒の辺鄙な村だった。
今はレイが作った防壁沿いに作った保存庫が全て商店になっていて、肉屋や魚屋、武器専門店まである。
レイはエラの店へと向かった。
「久しぶり。」
「お久しぶりです、レイさん。」
カウンターの奥にちょこんと座っていたエラが、笑顔で立ち上がる。
「いやいやいやいや、お久しぶりです。立派になられて。噂ではBランクの冒険者になられたとかで。その風格が漂っておりますな。」
側にいた色白ででっぷりとした男が近づいてくる。
「久しぶりです。ポッタさん。」
「お久しぶりでございます。今はこちらのエラさんとお取引させていただいておりまして。まったくもってレイ様の周りの方々は非常に優秀な方たちばかりで。」
「おい、レイ、見てみろ。」
笑顔のスミスがレイに魔法袋を見せた。
エラの作ったものだ。
エラが恥ずかしそうにしている。
「レイさんが作った物より良くなくて。あんまり入んないです。」
「そんなことはございません。この袋のおかげで商人がどれくらい助かっているか。」
ポッタがとんでもないとばかりに首を振る。
聞くとポッタが魔法袋を他国に販売して利ザヤを稼いでいるらしい。
今アウドの町にある自分の店を大きくするか悩んでいるそうだ。
「景気が良いな。」
「とんでもございません。これもひとえにエラ様とレイ様をはじめとした皆様のおかげでございます。」
「あとスミス、飯食った後村長のとこ行くが来るか。」
「いや、レイたちで行ってくれ。」
「分かった。」
一人まくし立てるポッタを残して、レイとトムとマールは昼飯を食べに戻っていった。




