87.ドインvs魔族
「止まるな。走れ。」
ドインの鋭い声に我に返ったレイたちは、一目散に要塞を目指す。
レイの耳元でヒュッと空を切る音がしたかと思うと、キンという甲高い金属音がした。
音のする方を見ると、すぐ横でドインの槍が魔族の剣を抑えている。
「早く行け!」
立ち止まりそうになったレイに、ドインはどなった。
レイはトムたちと共に、要塞の中へと逃げ込む。
中は戦いで傷ついて倒れている者、息を切らせて座り込んでいる者でごった返していた。
「こちらに。エリアヒール。」
サクソウに回復の範囲魔法をかけてもらい、全員の傷が治っていく。
だが何人かはピクリとも動かない。
「アレス、マールさんたちのところに行って。」
「クウン。」
これ以上アレスを戦わせることは無理だとレイは判断した。
アレスは尻尾を下げ、トボトボとマールたちのいる部屋へと向かっていく。
「レイ、ちょっと飲んで、食べとけ。」
ロックがポーションと干し肉を渡してきた。
干し肉をかじりながらポーションを飲んで疲労を回復させていく。
「こりゃ、ほとんど使いもんになんねえな。レイとトム、ロックウッドの武器だけか。」
スミスが人ごみの間を縫うように、ドインの部下と共に全員の武器をチェックしていく。
刃こぼれをしていたり折れている武器が多く、これ以上戦えるのはレイとトム、ロックウッドの面々だけのようだ。
「外はどうなってる?」
ドインと魔族の戦いがどうなっているのか、レイは監視窓から外の様子を伺った。
キンッキンと甲高い金属音と共に、何かが高速で移動しているのが見える。
「全っ然分かんないっす。」
一緒に眺めていたトムがため息をつきながら言った。
「大分拮抗してるな。ドインのバカ力をいなすとは。」
同じく戦況を見つめていたロックが感心している。
ロックは厳しい戦いの中で相当レベルを上げたのだろう。
かろうじて戦いの様子が分かるようだ。
「お前ら、何があってもいいように準備しとけ。」
ドインの部下から戦闘の準備を整えておくように言われる。
残った十数匹のオーガは、ドインたちの戦いに全くついていけず、巻き添えを食らって胸を貫かれたり、レシーアたち遠距離攻撃部隊の餌食になり数を減らしていた。
何十分にも及ぶ戦いの中で、オーガやドラゴンの姿が全く見えなくなり、ドインと魔族の一騎打ちとなっている。
相変わらず拮抗した戦いが繰り広げられている中、それらは急に現れたように見えた。
「うわっ。」
ドインの姿が見えるようになったかと思うと、ドインの顔に鋭い切り傷が刻まれているのが分かった。
「3人…。」
絶望したようにロックが呟く。
魔族も攻撃を止め、ニヤリと笑いながら剣を携えて立っている。
ドインと戦っていた魔族の隣には、同じく青黒い顔をした魔族が2人立っていた。




