86.乱戦
レイたちは襲い掛かってくるオーガたちを1匹ずつ倒していた。
戦うにつれて手が痺れ、足が重くなっていく。
段々と一撃で倒せなくなってきた。
アレスの動きも鈍くなっている。
レイとトムは2人で動きを合わせ、アレスと共に1匹を倒す方法に変える。
レイがオーガの懐に飛び込み切り込んだところを、トムが頭目掛けてハルバードを突き刺す。
アレスはオーガの背後を狙い、後ろ首に噛みついていた。
「うおっ。」
レイたちが戦っている最中、目の前のオーガめがけて大きな物体が落ちてきた。
思わず後ずさって見ると絶命したレッドドラゴンにオーガが潰されている。
オーガの首を切り落とすと、レイはチラっと後方を見た。
レシーアとサクソウ率いる遠距離攻撃部隊が、飛行するドラゴンやワイバーン目掛けて攻撃を仕掛けている。
だが地上にいる仲間を避けて落とすことは至難の技だ。
時折戦う仲間の頭上にドラゴンが落ちてきて、潰されることがあった。
そんな時はミナとジャミが駆けつけて、下敷きになった仲間を引きずり出している。
その他にもミナは魔物の気を逸らしたり、劣勢になった所の助太刀をしたりと大活躍だ。
要塞から300メートルほど離れたところで激しい戦いが繰り広げられていたが、徐々に後退する。
戦う者たちもどんどん疲労していき、戦線を離脱する者が多くなってきた。
だがオーガたちも数を減らしている。
オーガが残り十数匹となった時、レイは再び全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
見ると青黒い肌で赤い目の男が細身の剣を抜き、ゆっくりと歩いてくるのが見える。
「全員退避―!」
要塞からドインの部下が叫ぶ。
前線を維持しようと戦っていた者たちは、踵を返して一斉に要塞に向かって走った。
だが次の一瞬、前方を走っていたドインの奴隷の首が無くなった。
何が起こったのか分からず、全員が立ち止まる。
レイが後ろを振り返ると、魔族が奴隷の首を握り立っていた。




