78.行方不明
レイたちはドイン領を目指して軽快に進んでいた。
レイとサクソウの体調も良くなり、レイは今馬車の横を走っている。
ドイン領に入る少し手前で、急にタックとフクンが騒ぎ始めた。
アレスも変な鳴き方でレイの周りをウロウロしている。
「どうした。」
レイは自分の頭の上でよだれを垂らすタックに話しかけた。
「…にく。」
「にく?」
「にくにゃあああああ。」
カッと目を見開いたタックが地面に降りると、フクンを共に森の奥へと走っていく。
アレスも走って後に続く。
「ストップ!ストップ!」
レイが後続を走っていた奴隷たちを止める。
ストップと叫びながらレイは、最後尾を走るトムの所まで走ってきた。
「どうしたんすか。急に。」
レイのあまりの慌てぶりにトムも驚いている。
「タックとフクンがいなくなった!アレスも!」
「なんですってえええええ。」
側にいた奴隷が悲鳴を上げる。
レイたちの癒しとなっていた3匹のモフモフがいなくなったことは、つまりレイたちのピンチを意味する。
「ミナ、ジャミ、分かるか。」
震える声でレイが尋ねた。
「分からない。どこにいるか。」
ミナの顔も真っ青だ。
「自分たちの捜索範囲にいないってなると、かなり遠くに行ったのかな。」
ジャミが不吉なことをつぶやく。
「アレスはともかく、タックとフクンはそんなに持久力は無い。まだ近くにいるかもしれない。」
レイたちは1か所に集まると、タックたちが走っていった方向の森の中に急いで入っていった。
どこにいるか分からないため、全員参加で捜索する。
3匹の名前を呼びながら必死に森の奥へと分け入る。
「ミナ、ジャミ、分からないか。」
レイは今にも泣きだしそうだ。
「何かタックたち言ってなかった。」
レシーアがレイに問いただす。
「にくにゃあああああ、って言ってた。」
「にくにゃあああああ?」
「にくって言ってた。あとよだれ垂らしてた。」
余裕がないからか、レイの言葉づかいが幼稚になっている。
レイの話を聞いたミナはしばらく考え込んでいたが、ハッと顔を上げるとジャミに言った。
「ユジュカウいるか分かる?」
「探す。」
ユジュカウの肉は3匹の大好物だ。ミナとジャミがスキルを使って周囲を探す。
「いない。」
「じゃあダンジョン。魔力あるとこ探して。」
「OK師匠。」
ミナはレイの方を振り返る。
「ダンジョンの中にいると私たちも分かんないの。たぶんそこかも。」
「分かった!」
全員でミナとジャミが探し当てた魔力の多い場所をしらみつぶしに確認していく。
捜索途中で聞いたことのある咆哮が聞こえ、激しい振動が始まった。
前方からオークの軍勢が襲い掛かってくる。
奥にはひときわ大きいキングオークがいるのが見えた。
「邪魔だ。どけ。」
走りながら剣を引き抜いたレイが、オークたちを一気に倒していく。
時間にして3分足らず、数百体のオークの軍勢が1匹残らず倒された。




