73.ダンジョンコア
「だがこれは俺たちのもんで良いよな。」
スミスがニコニコしながら、黒皮と大きな魔石を見せてくる。
ブラックドラゴンを倒したらドロップしたらしい。
「そうですね。強い装備が作れそうです。」
「そうね。他のドラゴンの皮より軽くて丈夫なものになるわ。」
トムとレシーアは皮と魔石だけで満足そうだ。
皆思い思いに休んでいる。広い草原に青い空、風が心地よい。
レイはしばらく辺りを見渡していたが、ブラックドラゴンが残した大きな宝箱の後ろにある何かを見つけた。そこには小さい岩があった。
レイは何かに取りつかれたように這いずりながら岩に近づいていく。
魔法袋から短剣を取り出すと、岩を砕き始めた。
「何やってんすか。」
心配したトムが近づいてくる。
一心不乱に短剣で砕くと手を岩の中に突っ込み、何かを引き抜いた。
手には黒くて丸い玉が握られている。相当の魔力が込められていることが分かる。
「何すか、それ。」
隣に座ったトムも不思議そうに見ている。
「何だろ。俺のスキルでここにあることは分かったんだが。魔力が相当あること以上は分からん。」
探し当てたレイ本人にも詳しくは分からないようだ。
レイの周囲に何かあったかと人が集まってくる。
しばしば皆でソレを眺めていたが、レシーアがポツリと言った。
「ダンジョンコアじゃないかしら。」
「何だソレ。」
名前を聞いても全員キョトンとしている。
「聞いたことあるの。ダンジョンには動力となるコアがあるって。サクソウの方がもっと知ってると思うけど。」
「なあタック、フクン知ってるか。」
レイは2匹の方を振り向くが、既にヘソ天でアレスと共にお昼寝中だ。
ダンジョンについては、その成り立ちも含めてよく分かっていない。
神の娯楽と言われており、お宝や素材目当てに集まってくる冒険者を眺めて楽しんでいるらしい。
魔力の集まるところに出来やすいのだが、迷いの森など周囲の魔力が高いのに出来ない土地もある。
敵を倒すと素材と魔石を直接落とすため短剣を突き立てて取り出さなくてもよく、ランダムに宝箱が出てくることがある。
ダンジョンによって景色が異なり、階層のボスを倒すとリスポーンするまでに一定の時間がかかる。
最下層ボスを倒すと全階層の魔物が全く出てこない休眠期間があり、それを過ぎるとまた魔物が出てくるようになるが、最下層ボスを倒す前と比べて広く深くなるため、難易度が上がると言われている。
また転移の魔方陣など、人の知識では再現不可能と言われている装置がある。
そんな不思議なことが多いダンジョンのコアを手に入れてしまった。
「何に使うんすか、ソレ。」
ダンジョンにとって必要なものであることは分かったが、使い方が分からない。
「まあ、サクソウを助けた後に聞くさ。」
レイは魔法袋の中にダンジョンコアを入れ、寝ているタックをそっと抱き上げた。




