14.木こりカミングアウト
トムが絶叫した翌朝、レイとパンパンに顔を腫らしたトムは村の広場に集まっていた。
10人の男たちが、村の木こり長キッコンから仕事の説明を受ける。
この国に無数に生えている巨木は、国の特産品となっている。
成長が早く、鉄よりも固い幹は建築に武器に、多種多様なところで使用されている。
村は巨木を切り出し、国に税金として納めていた。
今日の仕事は木の切り出しと乾燥場所までの運搬だ。
2人はミスリル製の斧を借り、切り出し場所へと向かう。
ミスリル製の斧でも巨木であるが故、切り出しに時間がかかる。
休憩をはさみながら交代で木の幹に斧をふるっていく。
朝から一日がかりで仕事をして、ようやく8本の木を切り出して乾燥場所へと運んだ。
1人当たり1500Gをもらい家に帰る。
「昨日はすいませんでした。」
トムが頭を掻きながら恥ずかしそうに言った。
「いや、いいよ。俺のせいでもあるし。」
「そんなこと無いです。悪いのはあいつらです。」
あいつらが誰なのか心当たりがありすぎて絞れないが、レイは頷いた。
「それと自分、木こりっす。レベル12っす。スキルは斧術だけです。」
突然トムが話題を変え、レイは戸惑った。聞けば一応パーティーなのにそれぞれのスキルやレベルなど、必要な情報を言っていないことに気が付いたという。
職業木こりが故、兵士時代はバカにされ、斧を持つことに抵抗があったとトムは話した。
「俺はレベル3だ。職業は『復讐者』だ。」
「何ですかその職業。」
トムは大層驚き聞き返した。昨日醜態をさらして恥ずかしい思いをした。ここまでくれば腹を割ってお互いのことを話そうと自ら情報を出したが、その返答があまりに意外過ぎた。
「分からない。分からないが召喚された他の3人には恨みがあってな。そのせいだと思う。」
さらにレイは話を続け、
「スキルは『真実を見る目』と『無制限』だ。」
「何ですかそのスキルは。」
「分からない。武器と防具が揃ったら魔物を狩りながら確認しようと思う。」
どのような恨みがあるのかトムは興味を持ったが、レイから心の整理がついたら話すといわれて、それ以上聞くことは出来なかった。




