67.アダマンタイト
「ジャミ、何だこれ。」
「知るかよ。でも最下層から出たからすんごいお宝なはず。」
キレながらもジャミは金目の物じゃないかと目を輝かせている。
レシーアは黒い塊を持ち上げてしばし眺めていたが、
「これ、アダマンタイトじゃないかしら。」
と唐突に言った。
「おお!」
レイが思わず歓喜する。
ミスリルをはるかに超える強度を持つ伝説の素材だ。武器に加工してもらえば、最下層ボスのブラックドラゴンとも戦えるかもしれない。
「直ぐにスミスの所に持っていくか。」
「そうね。」
レイたちは急いで帰り支度を始めた。
「俺が命懸けで取ったんだけどな。」
お宝を見つけたジャミは、かなりふてくされている。
「何かお礼するよ。欲しいものあるか。」
「自由。」
「却下。」
レイがジャミの希望を即却下する。だが何か美味しいものを食べさせてやろうと、帰りに市場に寄って美味そうな酒と肉を買い込む。
拠点に戻り、レイはスミスに黒い塊を見せた。
「すげえ。アダマンタイトだな。」
「やっぱりそうか。」
「俺も1回チラッと見たことがあるだけだ。王都の商人ギルドでよ。300万ゴールドしたはずだ。」
「300万。」
値段の高さに思わず絶句する。
高くても10万ゴールド出せば総ミスリル製の武器が買える。
素材だけで300万は、武器に加工したらどのくらいの値段になるのか分からない。
「俺とトムの武器を作ってほしい。」
半ば食い気味にスミスにお願いした。
だがスミスは眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
「どうしたんだ。」
「残念だがよ。俺にアダマンタイトの武器は作れねえ。それだけの力が無いんだ。」
「そんな。」
「すまん。ミスリル合金がやっとだ。王都に1人だけ作れる奴がいるが、いくら金がかかるか分からねえ。」
ここまできて強力な武器が手に入らない。加工してもらうためには数十万ゴールドの金を稼いで王都に行くしかない。どの位時間がかかるか分からない。レイは落胆し、両膝をついてしまった。
その様子を傍らで見ていたスミスがボソッと言った。
「方法は、ある。」
「どんなだ。」
レイがガバっと立ち上がり、スミスの両肩を鷲掴みにした。
「俺を奴隷にしてくれ。」




