65.ドラゴン再挑戦
レイたちは潜り始めて4日目にシニフォダンジョン40階層に到達し、40~50階層の探索を始めた。
ペガルダンジョンと異なり、様々な種類の魔物が出現する。
小部屋の宝箱を漁りつつ、魔物たちを倒していった。
一方のマールたちは丸2日冒険者ギルドの資料を調べつくした後、町の図書館で調べ物を開始する。ドラゴン、特にブラックドラゴンを倒す方法を探すためだ。
5日目からはスミスと鍛冶が出来る奴隷が武器作りを開始した。
ここまでの旅でミスリルは唸るほどある。あとはダンジョンで得た素材と混ぜて、レイやトムが持つようなミスリル合金の武器を作るのだ。
スミスたちがいない分、シニフォダンジョンでの素材集めに時間がかかるようになるが、40から50階層で戦いまくり、必死に素材を集めていく。
9日目にスミスを除いたレイたち一行は、再びペガルダンジョン最下層へと向かう。
1匹でも多くドラゴンを狩るためだ。
戦闘に参加している奴隷たちの半数は、既にスミス特製の武器を携帯している。
青い空に草原が広がっている。
色とりどりのドラゴンが空を飛ぶ姿は圧巻だ。だがその雄姿を魅せるドラゴンは、レイたちが最下層のフィールドに降り立つと10匹以上が一斉に襲い掛かってきた。
「頼む。」
レイの一言と共に、魔法が使える奴隷たちが一斉に光魔法を放つ。
7人でタイミングを合わせて放ったため、大きな光球がドラゴンの目の前で一気に爆発した。
ダメージは入らないが、目を眩ませて動きを止めるには十分だ。
合わせるように矢が飛翔するドラゴンたちに浴びせられる。
スミスたち鍛冶職人が対ドラゴン用に作った矢だ。
致命傷を与えないまでも、羽根や体を傷つけ高度を下がらせることに成功した。
ミナが突進しムチを使ってレッドドラゴン1匹を引きずり倒す。
地面に付したドラゴンをレイとトムが素早く仕留めていく。
本当は倒した後の魔石と素材を回収したかったが、それよりも全員の安全を優先させる。
1匹倒したらレイたちは後退し、別のドラゴンに弓部隊とミナが攻撃を集中させた。
レシーアと近接攻撃の奴隷たちは、レイたちの支援へと回っている。
3匹ほど倒すと、遅れて地を這ってきたアースドラゴンと接敵する。
レイが風魔法でアースドラゴンをひっくり返すと、露わになった腹めがけてトムがハルバードを振るった。
罠にかかってもダメージが入らないほど固いアースドラゴンの体は一撃では倒せない。
レイとトムが何度も腹を攻撃し、やっと1体を倒した。
少しずつ攻撃が形になってきている。
「レイさん!魔力が尽きそうです!」
魔法部隊の1人が大声を上げる。
その声を合図として、全員が少しずつ後退する。
「どでかい光魔法!」
レイが号令を出すと、残りの魔力を振り絞り、魔法部隊が光魔法を放った。
ドラゴンたちが硬直している間に、全員が安全地帯である最下層入口の通路へと退避した。
「いいぞ。やったな。」
肩で息をしていたレイは満足そうだ。
最下層に初めて到達したときはダメージすら与えられなかったが、今日は6匹を倒すことが出来た。
「あとは素材回収が課題ですかな。」
トムも座り込みながら感想を漏らす。
ドラゴンがドロップする素材は貴重だ。レイやトムが身に着けている鎧もレッドドラゴン製で、対ドラゴン戦には同強度の防具が必要になってくる。
「そうだな。皆の装備のために、明日は素材回収も頑張るか。」
「ん?」
「ん?」
ジャミが思わず声を出したため、レイがジャミの方を見る。
ジャミは静かに水を飲んでいたが、隣にいたミナが何かに気が付いたのか、ジャミにヘッドロックをかけた。
「…出しなさい。」
「ぐっぁい。」
顔が真っ赤になったジャミが魔法袋を差し出すと、レシーアが手を突っ込む。
「これね。」
レシーアは魔法袋から何かを掴みだすと、レイたちの目の前に次々と置いた。
「全部取ってたんだな。」
レイが呆れたような感心したような声を出す。
6匹分のドラゴンの皮と魔石が地面に並べられ、レイたちが必死に戦っている最中、ジャミがちゃっかりと回収していたことが分かった。
「まあ、良かった。一応…ありがとう。」
「どぼいだじまじで。」
ミナにヘッドロックをかけられたまま、ジャミはレイの一応の感謝に応えた。




