64.急がば回れ
ペガルダンジョンの攻略に失敗した翌日、レイたちは開門から町の中に入り冒険者ギルドへと向かった。60人が一気になだれ込んだため驚かれつつも、受付でレイの冒険者証を見せ、ペガルダンジョンに関する情報を集めたいと言った。少し待たされた後ギルド職員が現れ、資料室へと案内するという。
「マールさん、ここ頼みます。」
「任せてくれ。しっかり集めるよ。」
「書き写すための紙とペンも用意しています。探しますよ。」
カンタも笑顔で答える。読み書きが堪能な30人の奴隷たちがマールとカンタの元、ペガルダンジョンとブラックドラゴンの情報について集める予定だ。
受付に声をかけ、レイたちが次に向かうのはシニフォダンジョンだ。
難易度普通の50階層からなるダンジョンで、冒険者で一番賑わうダンジョンでもある。
「目指すは下層だ。行くぞ。」
レイが奴隷たちに声をかけた。
『おう!』
一段と気合の入った返事だ。
ここでレイたちは40階層を目指す。下層になればなるほど質の良い宝や素材が集められるからだ。ペダルダンジョン攻略に役立つ物を集めるが、役に立たなくても売って資金に出来る。
シニフォダンジョンは、いわゆるダンジョンらしい構造で、迷路のように分かれた通路と小部屋がある。小部屋にはランダムに宝箱が置かれており、装備や素材、金目の物が手に入る。一番奥にはボス部屋があり、ボスを倒すと下の階層に進める仕組みだ。
通路が狭いため、縦長になって進む。先頭はトムとジャミ、中衛にレシーアとスミス、最後尾はレイとミナで隊列を組んだ。タック、フクン、アレスはレイと一緒だ。
「何で俺が先頭なんだよ。」
ジャミがブツブツ文句を言っている。
「うっさいわね。あんたすぐ逃げるでしょ。罠直ぐ見つけないとあんたが死ぬよ。」
師匠であるミナがキツく言いつける。ミナはジャミの行動を完全に把握しており、逃げられないように先頭に据えることを提案したのもミナだ。
冒険者ギルドにはシニフォダンジョンの地図が売られており、その地図の通りに一行はわき目もふらずボス部屋へと向かう。途中レイたちの勢いに驚いて固まる冒険者に「こんちはー。」と挨拶しながら一日で10階層まで進んだ。夜になる前に転移の魔法陣からダンジョン入り口まで戻る。
「1週間くらいかかるかな。」
レイは額の汗を拭いながら言った。
「そうね。あと3日かけて40階層まで行って、そこからレベル上げと素材集めね。」
レシーアが同意する。
途中マールたちと合流し、町の外に作った拠点へと帰る。
「ただいま。」
「お帰んなさい。」
チルがスキップしながら出迎えた。
「何も無かったか。」
「大丈夫です。こんだけ厳重に作っといて何言ってんですか。」
戦える者がいない拠点の安全を考えて、拠点は10メートルを超える防壁に囲まれている。
出入口にも頑丈な扉を付け、留守番する奴隷たち1人1人に通信の魔道具も持たせた。
魔法を使えたりする奴隷もいるが、オークを倒せるのがやっとという者ばかりのため、心配性のレイは念には念を入れて対策している。
食事を終えて風呂に入った後、戦いに参加するものを中心に、今日の成果を話し合う。
はやる気持ちを抑えて、全員のレベルを上げて武器を強くしなければならない。
「サクソウ、待っててね。」
眠る前、ミナは首にかけてあるペンダントを握りしめて小さく呟いた。




