62.失敗
レイたちが足を踏み入れたことで、敵が来たことを認識したドラゴンが一斉に襲い掛かってくる。
援護しようと奴隷たちが矢を放ち魔法を撃つが、全く効いていない。
「来るぞ。」
レイたちの元に真っ先に到達したレッドドラゴンがブレスを吐いてきた。
すかさずレイが氷魔法で相殺する。
だが、空からくる3種のドラゴンがそれぞれ属性の異なる魔法を放つため、レイとレシーアは相殺する魔法を放つので精いっぱいだ。
トムが武器で攻撃しようとするが、相手ははるか上空を飛んでいるため攻撃が当たらない。
「うわっ。来た。」
ジャミの悲鳴と共に足元を見ると、アースドラゴンが大きな口を開けながら襲い掛かってくる。
トムとミナが武器を必死に振るうが、体まで武器が届かず大きなダメージが入らない。
1時間ほど膠着状態が続き皆に疲れが見えたのを感じ、レイは判断を下した。
「全員退避!」
全員少しずつ入口まで後退していく。
レイ・トム・レシーア・ミナは戦いながらの後退のため、かなり苦しそうだ。
『うんにゃー。』
事の経緯をスミスの後ろから見ていたタックとフクンが空に向けて光魔法を放つ。
太陽を数倍明るくしたような強力な光により、ドラゴンたちの攻撃が止まった。
ドラゴンたちの動きが止まったのを見計らい、全員ダッシュで入り口まで逃げ帰る。
「生きた心地がしませんでした。」
トムが肩で息をしながら言った。
「さすがに無謀すぎるか。」
レイは自分の見通しの甘さにショックを受けうなだれている。
完全に調子に乗っていた。キッコーリ村でのオーク戦も、ライバの町でのオーガ戦も勝利し、オーガ戦に至っては犠牲者がいなかった。自分たちの力が勝利に導いたと過信していた。
しかし実際にはAランクやBランクパーティーの戦力、作戦を指揮したライバ大領主や先まで見通していたキッコーリ村長の功績によるところが大きい。
「…拠点に戻って作戦練り直すか。」
「そうっすね。一旦帰りましょう。」
「仕方ないよ。ドラゴン相手に死人が出なかっただけでも成功だと思うよ。」
「そうね。初めてにしては上出来よ。」
ミナとレシーアに慰められながら、一行はトボトボと拠点へ戻った。
「おかえり。大分疲れてるようだね。」
「ガウ。」
マールとアレスが元気いっぱいに迎え入れてくれたため、わずかにレイたちに元気が戻った。
風呂に入った後建物の中心で車座になり、何日かぶりの温かい食事にありつく。
「この後皆で話し合おう。」
「そうっすね。必ず攻略しましょう。」
フラフラになりながらも、レイとトムは再びダンジョンに挑もうと心に誓った。




