13.トム心の叫び
夜になり、レイとトムは村唯一の食堂で食べていた。
夫婦で経営するこの宿屋兼食堂には、夫婦とその子供である女の子と男の子、レイとトムしかいなかった。何の変哲もない村に泊まる物好きは中々いないものだ。
ツケで料理と酒を頼み、黙々と食べていく。
これまでの一連の出来事に、楽しく飲み交わすということが出来ない。静かに時間が過ぎていく。
客の様子を見ながら、全く盛り上がっていないからあまり長居はしないだろうと宿屋の主人は考えていた。もうそろそろ閉めて子供たちを寝かしつけないと。
しかし、それは突然起こった。
「ぐっ…うわああああああああん。」
大男が突如泣き叫び、テーブルに突っ伏した。
「なんで!なんで俺がこんな目に合うんだ。出世するって村出たのに。婆ちゃんに楽させるって言ったのに。なんで。真面目に仕事したのに。悪いことしてないのに!」
うぎゃあああと叫びに近い声で泣き、トムは喚き散らす。
「なんで。なんで!」
「すまない。」
トムの背をさすりながら、レイは詫びた。
「レイっレイさんのせいじゃ無いです。あいつらのせいです。なんで。天罰が下ればいいんだ!あんな奴ら!」
トムが泣き叫び、レイが背中をさすっているだけの時間が過ぎていく。
宿屋の主人は「こりゃ朝まで開けなきゃなあ。カミさんに子供の世話を頼もう。」と考え、子供たちは突然泣き叫び始めた大男に驚きながら、静かに食堂から出て行った。
大男の絶叫と共に夜が更けていった。




