61.ペガルダンジョン最下層
レイたちは1日たっぷりと休息を取った次の日、最下層へと続く長い階段を下りていた。
最下層も草原と青い空の階層となっている。
1歩足を踏み入れる前に、全員で最下層に広がる景色を眺めていた。
「何だありゃあ。」
スミスが呆然としている。
1階層、2階層の中心にはボス部屋に続く大きな扉があったのだが、最下層の中心には大きな黒いドラゴンが横たわっている。
「あんなん無理だよ~。」
既にジャミは諦めている。
ボスを守るかのように、赤・青・緑のドラゴンが50匹ほど空を飛んでいる。全長10メートル以上あるドラゴンはかなりの迫力がある。
草原には、十数メートルほどの大きさがある茶色いドラゴンがゆっくりと歩いていた。
「赤いのはレッドドラゴン。炎を吐くわ。青いのはブルードラゴンで氷のブレスに気を付けて。緑色のグリーンドラゴンはブレスは吐かないけど翼から風魔法を出すの。それと嚙みつきと爪に気を付けて。尻尾も振り回して攻撃してくるわ。」
レシーアが詳しく説明してくれる。
「這っているのもドラゴンか。」
レイは草原を這っているワニのような魔物を指さした。
「あれはアースドラゴンよ。魔法は使わないけど体がすごい固いの。動きはゆっくりだけど噛み殺されないように気を付けて。」
「ひえっ。」
思わずジャミが悲鳴を上げた。
「嫌だなあ。罠もあるみたい。」
ミナが顔をしかめながら言う。
「アースドラゴンから逃げつつ、罠を避けつつ、飛んでるドラゴンと戦いながらボスを目指せってことか。」
「そうね。それしかない。」
レイがざっくりと立てた作戦に、レシーアが同意する。
ペガルダンジョンが最難易度のダンジョンである所以はここだ。どんなベテランの冒険者でも2階層まで進んだ後、この光景を見て諦める。
ドラゴンは複数のAランクパーティーが合同で1匹倒すような魔物だ。それが50匹以上もいるとなると攻略は難しい。たとえ上手く逃げつつボスの所までたどり着けたとしても…。
「あのボスは。」
「ブラックドラゴンね。あらゆる状態異常のブレスを吐いてくる。体調も20メートルくらいあるみたい。魔法も物理攻撃も効きづらいわ。」
レイはレシーアの答えに思わず絶句する。
それぞれのドラゴンには弱点となる魔法があるのだが、ブラックドラゴンには無いらしい。
さらに物理攻撃も通しづらいとなると、どのように攻略すればいいのかと途方に暮れる。
レイたちは打ち合わせをした後軽く休憩し、最下層へと足を踏み入れた。




