57.ペガルダンジョン初挑戦
日の出とともに町の門が開くと、待ち構えていたようにトムたちがなだれ込んだ。
30人の奴隷たちと共に走り出す。目指すは町の最西にあるペガルダンジョンだ。
大通りをひたすら西にいくと、突き当りに大きな門がある。
門の前には屈強な兵士たちが立っており、ダンジョンの方を向いて警戒している。
万が一魔物があふれ出した時のためだ。
入り口の兵士にトムがCランクの冒険者証を見せると、無言で門を開けてくれた。
ダンジョンの入口でトムはピタリと立ち止まると、後ろにいたスミスたちの方に振り返った。
「皆いいか!今からペガルダンジョンに挑む。覚悟は良いか。」
『おう!』
奴隷たちが武器を振り上げて応える。
隊列を組んで、ダンジョンを塞ぐ扉を開ける。暗闇の中しばらく進んでいくと、明るい巨大な空間に出た。
ダンジョンの中なのだが青空が広がっており、足元には柔らかそうな草が生えている。
魔物さえいなければ、昼寝をしたくなるような場所だ。
「構えろ。」
トムが鋭く指示を出す。
前衛がそれぞれ武器を構えた。襲い掛かってくるポイズンフライに向かって武器を振り上げる。
100匹ほどいるポイズンフライは羽から粉を出しながら、醜い口を開けて攻撃してくる。
攻撃は2種類。羽から出される鱗粉を吸い込むと、毒が全身に回り痺れて一定時間動けなくなる。
その隙に、強靭な顎で獲物をかみ砕くのだ。
トム以外の前衛はヒット&アウェイを繰り返しながら、ポイズンフライに攻撃を加えていく。
弓や魔法は温存している。今日中に2階層まで行きたいからだ。奴隷の中でも遠距離攻撃が出来る者は限られている。
「2時の方向。10メートル先に罠あります。」
奴隷の中で唯一の索敵スキルを持つ者が声を張り上げる。
「11時の方向に進め。間を空けるな。」
スミスは陣形の中央から指示を出す。
少しずつ前進していく中で、突然1人の奴隷が倒れた。
激しく痙攣していて、手足の自由が全く効かない。鱗粉を吸い込んだためだ。
すると少しずつ陣形が崩れ始めていく。
「弓撃て。」
たまらずスミスが次の指示を出す。温存していた弓と魔法を使うことを決めた。
だが全く前に進まなくなり、とうとうトムとレシーアも参戦せざるを得なくなった。
「スミス撤退しよう。」
トムが提案する。スミスは唇を噛みしめていたが、1人また1人と痙攣して体が動かなくなった者が増えてきたため、観念したように大声を出した。
「撤退!少しずつ後ろに下がれ。」
戦闘不能になった者を引きずりながら、皆で少しずつ後退する。
その頃にはトムが前衛として、ハルバードでポイズンフライをなぎ倒していた。
安全地帯であるダンジョン入り口まで来ると、スミスは額の汗を拭った。
「すまねえ。1階層の半分も行けなかった。」
「いいっすよ。全員無事だったし。」
未だ痙攣している者たちに薬を飲ませながらトムが慰める。
「初めてだとこんなものよ。明日もあるわ。」
レシーアも言った。
「まあ、何だ。反省点あるな。反省ばっかりだな。帰って飯食って話し合うか。」
「それが良いわね。帰りましょ」
「ですな。魔石も素材もほとんど拾ってませんが。」
「うわあ、それが一番ショックだ。赤字じゃねえか。」
スミスが自分の頭をポコポコ叩いた。




