12.トムの家族
トムはよろず屋の中に入ると、
「ただいま。」
と店番をしている老婆に声をかけた。
老婆はぴょんと椅子から立ち上がると、全力でトムに向かって飛び蹴りを食らわせた。
小さな弾丸のような老婆の飛び蹴りに、トムは「ふんがっ。」と声を出し、後ろによろける。
「なーにしとるね。あーた!兵士になったんじゃなかったん?」
「色々あって。村長には今挨拶してきた。兵士辞めてきて今冒険者。」
「ほーん。その割には装備なんもないね。」
「言うなよ。今から稼ぐ。俺の部屋まだある?」
「あるね。誰も住んどらんよ。そいで後ろのめんこい女の子は彼女かい?」
「男です。」
レイはあっけにとられていたが、女の子と言われて慌てて否定した。
「そうかね。ゆっくりするがええ。食い物余分なものなくってね。夜は食堂でツケで食べてくれ。」
「そうする。」
トムはそう言った後、金を稼ぐためにギルドの出先機関に行くことを提案した。
2人はギルドへと赴き、明日の朝からやる仕事を紹介してもらった。
仕事をもらった後、家に帰りながら、レイは言った。
「お前のばあさんすげえな。」
「そうですね。親も爺さんも死んでしまって。唯一の家族なんです。頭上がらないっす。」
「そのようだね。」
先程の強烈な飛び蹴りを思い出しながら、レイは頷いた。




