49.援軍
夜の森の中を3人は走り出した。
マール特製の馬車は揺れが少なく快適なようで、3匹は大人しく寝そべっている。
本来ならば街道を行く方がはるかに速いのだが、ここはローミ領、誰かに見られるとマズい。
馬車を引くレイの前をジャミが、後ろをミナが走る。足を取られないように慎重に走るため、
先ほどよりも速度は遅い。
「うっ。」
ジャミとミナが同時に何かに反応した。
「どうした。」
「魔物が近寄ってくる。たくさん。気を付けて!」
ミナは腰に付けた短剣を取り出した。
「師匠、どうしましょうー。」
ミナのことを師匠と呼ぶジャミは既に半泣きだ。
ジャミは最初のころミナのことを「おい。」とか「ちょっと。」と呼んでいたが、ミナとレシーアに念入りにシバかれ、今では師匠と呼ぶ。
警戒する3人に対して馬車に乗っているキングウルフがのんびりと言った。
「大丈夫、味方だ。警護してくれるようだ。」
次第に荒い息遣いが周囲から聞こえてきた。
目を凝らすとウルフとハイウルフが50頭ほど周囲を走っている。
3人を襲ってくることは無く、キングウルフの言う通り守ってくれるようだ。
ミナも短剣をしまい、周囲の警戒へと集中する。
休憩を取ることなく走り続けていると、次第に東の空が明るくなっていく。
しばらく走っていると1頭のハイウルフが走りながら近づいてきた。
キングウルフをちらっと見ると馬車に寄り添うように走っている。中々のイケメンハイウルフだ。
「もしかして旦那さん?」
たまらずレイがキングウルフに問いかけた。
「黙って前向いて走れ。」
「…はい。」
東の空から日が昇る頃、ライバ領とローミ領境の検問所まで来た。
だがレイたちは大回りをして森の中を走り抜ける。
ローミの兵たちにキングウルフを見られないようにするためだ。
気配を悟られないようにするため、大分森の奥まで迂回し走り抜ける。
「ライバ領に入ったね。街道に出る?」
ミナが提案するが、
「いや。人目に付かないようにしよう。空き地を見つけたら休憩しようか。ライバに連絡したい」
「分かった。」
ライバ領に入り小さな空き地見つけた一行は、走るのを止め全員で食事を取る。
キングウルフたちにも肉をあげようとしたが、「人間の施しは受けない。」と断られてしまった。ウルフたちは周囲の森に散り、エサとなる獲物を探すようだ。
レイはライバに通信の魔法陣を使って連絡した。西門から堂々と入ってくるように言われ、鼻息の荒いライバに不安を覚えながらもその通りにすることにした。




