48.エル・キャットとキングウルフ
「あのね、オオカミのおばちゃん。」
「おっおばちゃん。」
小さなフクンにおばちゃんと言われたキングウルフが固まる。
「あのね、レイって優しいの。」
「いっぱい美味しいものくれるにゃ。おやつたっぷりにゃ。」
タックも加勢する。
タックとフクンは互いの前足を合わせた。すると2匹の前足から小さな光の玉が出てくる。
「これね、レイ。」
光の玉はフワフワとキングウルフの前に飛んでいき、目の前でポンと弾けた。
キングウルフは弾けた光の玉を凝視していたが、ゆっくりと口を開く。
「なるほどな。闇深い部分はあるが善良だと。」
「そう。ライバキモイけど、モフモフには優しい。」
フクンの口調はゆっくりだが、内容は中々辛らつだ。
「そうか。」
キングウルフは目を閉じて考えていたが、ゆっくりと開くとレイに言った。
「そうだな。その提案乗ることにしよう。」
「ありがとう。信じてくれて。」
「礼なら猫に言うことだな。中々面白い光景だった。」
タックとフクンが光の玉で何を見せたのか気になるが、今はとにかく時間が無い。
直ぐに出発しようというレイにキングウルフが言う。
「悪いが我はあまり動けんぞ。この体でな。」
「大丈夫。馬車用意している。」
レイは腰に付けた魔法袋に手を入れ、一気に馬車を取り出した。
マールが自分専用にとあつらえた特製の馬車だ。絶対にレイは黙って持ち出している。
「マールさんに怒られても知らないわよ。」
少し呆れたようにミナが言う。
「大丈夫、ケツ蹴られるだけだから。」
「あのねえ。」
呆れすぎて黙ってしまったミナの代わりに今度はジャミが質問した。
「馬車っても、リザードホーズいねえじゃん。」
生き物は魔物であっても魔法袋の中に入れられない。
「大丈夫、俺が引く。」
「マジかよ。」
ジャミも呆れて黙ってしまった。
レイは気にすることなく魔法で玉座を地面から離し、玉座ごとキングウルフを馬車に乗せた。
「タックとフクンも乗って。」
『にゃん。』
2匹も馬車に乗る。
ついでによっこらしょと馬車に乗ろうとしたジャミを、レイは蹴り落した。
「痛え。何すんだよ!」
「お前は乗るな、狭くなる。」
「ケチ!」
「お前も馬車引け。」
「アホか!」
言い争うレイとジャミを見て、キングウルフは猫たちが見せてくれた通り、レイは心優しき善良な変態だと思った。




