47.キングウルフ
「フクン本当か。」
「うん。森の奥にいた。」
「レイ、急いでるから言わなかった。」
タックも相槌を打つ。ローミの町へと急いでいたから言わなかったらしい。
キングウルフの居場所が分かったレイの判断は素早かった。
「二手に別れよう。トム、マールさん・スミス・レシーアと奴隷たちを連れて、ローミの町に向かってくれ。」
「分かった。レイは。」
「キングウルフを保護する。ミナ・ジャミ・タックとフクンで行こうと思う。」
「俺もかよ。」
ミナの隣に座っていたジャミが抗議の声を上げる。
「索敵が重要だ。他の魔物との戦闘を避けつつ、ライバの町に向かう。」
ライバは大のモフモフ好きだ。キングウルフにはライバの異様なモフモフ好きに我慢してもらわなければいけないが、命の心配なく丁重に扱ってもらえるだろう。
レイとミナは急いで支度をして、タック・フクン・ジャミを連れて外に飛び出した。
夕暮れの道を東へと走り出す。
フクンの言った村までは歩いて半日だが、走れば3時間ほどで着くだろう。
「夜通し走んのかよ。」
ジャミが文句を言うが、
「今夜中に保護してライバ領に入りたい。走れ。」
と殺気立つレイに言われ、渋々付いてきていた。
3人はワイバーン討伐でレベルが上がったからか、休むことなく軽快に走っていた。
レイにおんぶされたタックとフクンは眠たそうだが、しっかりレイにしがみついている。
星が夜空を照らす中、フクンの言っていた村に到着した一行は、村の北に広がる森へと入っていった。
木の根に足を取られそうになりながら1時間ほど走ると、ボウっと辺りが明るくなる。
前方を見ると葉が敷き詰められた玉座のような場所に、黄金に輝く毛並みの大きな狼が横たわっていた。お腹がかなり大きくなっている。
「…エル・キャットが人間といるとはな。」
「げっ、喋った!」
ジャミが驚いている。
「下賤な奴め。何用だ。」
レイは戦闘の意思が無いことを示すため、キングウルフの前に跪く。
ミナとジャミもレイの後ろで同じように跪いた。
「お伝えします。」
胸に右手を当てながらレイは言った。
「200人を超える冒険者がこちらに向かっています。あなたを討伐するために。」
「ふん。皆殺しにするまでよ。」
プライドが高いのか、キングウルフは皆殺しにするという。だが言葉とは裏腹に、大分苦しそうにしている。
「今スグここから離れてください。ライバ領に行けば安全です。」
「我に逃げろというのか。」
「違います。お子様の安全のためです。いくらキングウルフといえども、生まれたばかりを襲われたらひとたまりもありません。」
「お前らを信じろというのか。」
「うっ。」
確かに信じろと言っても、キングウルフの信用に値する何かをレイは持っていない。
レイが言葉に詰まっているのを見て、眠そうにしていたタックとフクンがレイの背中からシタッと下りた。




