46.大規模討伐
レイたちは順調にローミの町へと向かっていた。
夕暮れ前、野宿をする前に領境に近いローミ領の大きな町に立ち寄る。
普段はトムが町に入りレイが奴隷たちと外で待っている場合が多いが、ローミ領に入ってからはレイが町に入ることが多くなった。
ライバと事前に打ち合わせをした結果、Bランク冒険者であるレイの顔を売る方が良いと判断したからだ。
レイはマール・スミスと共に町に入ると、冒険者ギルドへと向かう。
ギルドは冒険者たちでごった返していた。おそらく200人以上はいるであろう。ギルドに入りきらず、外で立っている冒険者も多かった。
レイは人をかき分けながら受付へと向かう。
「何だ、何があった。」
受付でギルド職員に声をかける。
「大領主から依頼がありまして。かなりの報酬なんで人が集まったんですよ。」
「Bランクだが参加できるか。」
「すいませんね。もう締め切りまして。」
レイは少しがっかりしたが、話を続けた。
「どんな依頼か聞くこと出来るか。」
「ダメですよ、横取りは。」
と言いながら職員は他から見えないように手のひらを上に向けて動かす。
金をくれという合図だ。
レイが大銀貨1枚・10万ゴールドを職員の手の中に入れると、職員は顔を近づけて小声で言った。
「近くにキングウルフが出ましてね。妊娠してるようなんです。普通は強くて討伐できませんけど、妊娠中ならと。ローミ様が毛皮を高く買い取ってくれるそうで、人を集めて探してるんです。」
レイはそれを聞くと大声で、
「もう締め切ったのか。残念だ。次あったら声かけてくれ。」
と言い、ギルドの外でマールたちと合流した。
マールはライバの町で売れ残った素材が高く売れたとホクホク顔だ。
「良い依頼はあったかい。」
とマールは尋ねたが、それにレイは答えなかった。
「早くトムたちの所に行こう。」
3人は足早に町の外へと向かう。
「どうでした。」
頭の上にタックとフクンを乗せたトムが、レイの作った建物から出てきた。
「皆少しいいか。」
難しい顔をしたレイがトムやレシーアたちを建物の中心に集める。
そして冒険者ギルドで聞いたキングウルフの話をした。
「妊娠中襲うのはなんかひどいっすね。」
トムも難しい顔をしながら言った。
「キングウルフってね、とても賢いの。めったに人を襲うこともないのよ。」
レシーアも険しい顔をしている。
魔物は討伐の対象だ。だが、今回の討伐は違うのではとレイは感じていた。
「そうだよな。何とか助けられたらと思うんだが、居場所が分からない。」
「討伐する冒険者たちの後を付けていけばいいんじゃない。」
ミナが提案したが、マールに、
「サクソウ助ける前に騒ぎ起こしちゃね。地元の冒険者とのイザコザは避けた方がいいさね。」
と反対されて、皆黙ってしまった。互いに顔を見合わせるが、良い案が見つからない。
事の成り行きを、おやつをハムハム食べながら聞いていたフクンがのんびりと言った。
「1こ前の村の近くにいたにゃりよ。」




