11.トムの故郷
歩いて昼過ぎに2人はトムの故郷にたどり着いた。
キッコーリ村と呼ばれるなんの変哲もない村で、食堂兼宿屋が1件、よろず屋が1件、商人兼冒険者ギルドの出先機関が1件あるだけだ。
トムが門番をしている女に声をかけ、村の中へと入っていく。
「ご飯食べますか。」
悲しみより食欲が勝ったトムが言った。
「そうだな。だが金がない。」
「村長の家に行きましょう。顔見知りですし。」
「うん。」
2人は連れ立って村の一番奥にある村長の家に向かった。
2人とも下を向いて黙ったままだ。
「おっ!なんじゃい。トムか。久しぶりじゃのう。」
白髪が全て逆立った個性的な髪形の小柄な村長が出迎えてくれた。
エプロンを着け、手にはおたまを持っている。
「お久しぶりです。元気そうで。」
トムは無理やり笑顔を作り答えたが、
「なんじゃ。何かあったのか。お腹空いとらんか。飯食え。話聞くぞ。」
一気にまくし立てると、村長はひょこひょこと台所に向かい、山盛りの肉とパンを抱えて戻ってきた。
2人は緊張から解放されると一気に空腹が襲ってくる。
肉とパンを食べ腹が満たされた後、王都で起こったことをポツポツと話し始めた。
腕組みしながら話を聞いていた村長は、2人が話終えた後、口を開いた。
「はあ。だまされたんじゃのお。代金は品物と交換が基本じゃ。衛兵も金で買収されとんな。」
「そうなんですか。」
「当たり前ぞ。スミスっちゅう奴の話も聞かんと罰することは普通ないぞ。騙されて物も金も取られたな、こりゃ。」
2人はうなだれながら話を聞いていた。
「金も無いっちゅうンで、仕事はギルドから受けるがええ。住むところは婆さんに頼むがええぞ。トムよ、そうするつもりなんじゃろ。」
「はい。そうするつもりでした。」
「まあ。スミスっちゅう奴のことは、ワシからキッコンに話するわ。キッコンは顔が広いから知ってるべ。ほら、婆さんの所に早う行けえ。」
村長に促されて家の外に出た。
頭の中では分かっていたことだが、面と向かって「騙された。」と言われると落ち込んでしまう。
トムはわざと明るく大きな声で言った。
「では私の家に行きましょうか。直ぐ近くなんです。」
2人は肩を並べて歩き始めた。




