38.ローミの町とサクソウ
「しばらく町に滞在しますよ。」
「何故に。」
トムはライバの町にしばらく滞在するという。レイは早くローミの町に行きたかったが、トムに引き留められた。
「まず、レイさんはBランク、スミスさんはCランクになります。」
「そうか。」
「あと、犯罪奴隷以外で戦闘に参加した奴隷たちはEランクになるそうです。結構な人数参加したので用意に時間がかかるそうです。」
「有難いな。」
「そうなんですよ。それで、大切なことなんですが。」
トムの表情が少し暗くなった。いつも明るいトムを見ているレイが驚く。
「いやはや。中々に大変ですな。えっまだいたんですか?」
ライバが部屋に戻ってきた。
「すいません。直ぐに出ます。」
レイが謝る。
「いえ。良いんですよ。滞在中は離れ使ってください。部屋多いから奴隷さんたちも泊まれるでしょ。」
「有難うございます。」
「あとトムさんにはお伝えしたんですが。」
ライバの顔がレイにグッと近づく。
「レシーアさんとミナさんのことね。いえ。ロックウッドの皆さんと言った方がいいでしょう。」
部屋の中にいた兵士と元カンタ村の奴隷たちに外に出るように指示し、ライバは自分の椅子に座って話を続けた。レイ・トム・スミス・レシーア・ミナの5人もライバに促され、椅子に座り真剣に話を聞く。
「皆さん存命ですが、ちょっと良くない状況でして。」
「無事なんですか?」
ミナが身を乗り出した。レシーアもそわそわしている。
「生きてはいますよ。ただね、サクソウさんはローミの町に、ロックさんとゴザさんはドインのところにいます。3人とも犯罪奴隷として。」
レシーアが手で口を覆う。
「サクソウ…。」
ミナも両手で顔を覆った。
事情が分からないレイたちに向かって、ライバが説明をする。
「ドインの所は確かに危険です。魔族との戦いがありますんで。でもドインなんでね。2人を無下に扱わないでしょう。」
「問題はサクソウさんですか。」
レシーアとミナの反応を見て、レイが質問した。
「そうですね。ローミ。いけ好かない奴ですよ、はっきり言って。いやらしい奴と言ってもいい。」
「解放してもらうためには。」
「難しいですね。足元見られるでしょう。下手すればレシーアさんたち、最悪レイさんたちも奴隷にされかねない。」
「解決策考えないと。」
「それについては私の役目でしょう。大領主同士やり合うことになるでしょうね。」
6人は難しい顔をしながら考え込んだ。嫌な交渉相手である。ポツポツと意見を出し合いながら話し合っていると、不意にマールの大きな声が聞こえてきた。
「トム。レイ。まだ終わんないのかい。早う町行くよ。」
兵士たちが止める間もなく、元気なマールが部屋に飛び込んできた。




