37.裁判
「カンタ村長、及び村人全員も連れてまいれ。」
「はっ。」
命令を受けた兵士が、アウド領で全員レイの奴隷になった村人たちを引き連れてきた。
全員縄で縛られ、一列に繋がれている。
レイは思わず叫んだ。
「待ってください。」
「ダマらっしゃい。」
ライバがレイをキッと睨みつける。
レイは詰め寄るが、先に兵士たちによって床に組み伏せられた。
必死に振り解こうとするが6人がかりで押さえつけられ、もがくことしか出来ない。
レイが顔をわずかに上げてレシーアとミナを見ると、抵抗することなくライバの前に膝まずいている。なぜかトムとスミスも声を上げることなく静かに立っていた。
「では、裁判を執り行う。」
ライバは懐から紙を取り出し、読み上げた。
「王命に背き王都を危険に陥れたロックウッドの一員、レシーアとミナは犯罪奴隷とする。また、税逃れで村を放棄したカンタ村長も犯罪奴隷とし、同調した村民全員を奴隷落ちとする。」
「ちょっと待…。」
レイは声を上げるが、構わずライバは話し続けた。
「レシーア・ミナ及びカンタを捕らえたレイには褒賞金を与え、さらに今回奴隷にした全員の所有権を認めることとする。」
「んん?」
レイはわずかに上げた顔で不思議そうにライバを見つめるが、ライバは粛々と裁判を続けた。
懐から取り出された紙はトレイの上に乗せられ、それにライバはサインした。
傍らにいる部下にサインした紙を渡すと、
「大臣とアウドさんの所に送ってください。」
「はい。」
部下は机の横にある小さな魔法陣に紙を乗せている。魔力を流すと一瞬で紙が消えた。
その横のさらに小さな魔法陣に向かって何やら小声で話している。
まだ裁判中にも関わらず、レイは思わずその様子を凝視した。
「じゃ、これで。レイさん、はい褒賞金。」
10ゴールドの価値がある中銅貨をレイに渡すと、ライバはスタスタと部屋を出て行った。
「レイさん、レシーアさんとミナさんの奴隷紋に魔力流してください。」
手のひらに収まった中銅貨を見つめるレイを尻目に、トムが淡々と事を進める。
「謀ったな。」
「いえ、時短です。前もって決めてたんで。」
レイはトムを睨みつけるが、スミスが割って入った。
「いいじゃねえか。他に良い策が無かったんだ。無罪放免にするわけにゃいかねえし。」
「そうです。そうです。オーガ討伐の褒賞金もタップリ貰いましたし。」
トムは魔法袋から金がパンパンに詰まった袋を取り出し、ニッと笑った。




