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復讐者  作者: 安慶
勇者と魔族とモフモフ
105/421

37.裁判

「カンタ村長、及び村人全員も連れてまいれ。」

「はっ。」

 命令を受けた兵士が、アウド領で全員レイの奴隷になった村人たちを引き連れてきた。

全員縄で縛られ、一列に繋がれている。

レイは思わず叫んだ。

「待ってください。」

「ダマらっしゃい。」

ライバがレイをキッと睨みつける。

 レイは詰め寄るが、先に兵士たちによって床に組み伏せられた。

必死に振り解こうとするが6人がかりで押さえつけられ、もがくことしか出来ない。

レイが顔をわずかに上げてレシーアとミナを見ると、抵抗することなくライバの前に膝まずいている。なぜかトムとスミスも声を上げることなく静かに立っていた。

「では、裁判を執り行う。」

ライバは懐から紙を取り出し、読み上げた。

「王命に背き王都を危険に陥れたロックウッドの一員、レシーアとミナは犯罪奴隷とする。また、税逃れで村を放棄したカンタ村長も犯罪奴隷とし、同調した村民全員を奴隷落ちとする。」

「ちょっと待…。」

レイは声を上げるが、構わずライバは話し続けた。

「レシーア・ミナ及びカンタを捕らえたレイには褒賞金を与え、さらに今回奴隷にした全員の所有権を認めることとする。」

「んん?」

レイはわずかに上げた顔で不思議そうにライバを見つめるが、ライバは粛々と裁判を続けた。

懐から取り出された紙はトレイの上に乗せられ、それにライバはサインした。

傍らにいる部下にサインした紙を渡すと、

「大臣とアウドさんの所に送ってください。」

「はい。」

 部下は机の横にある小さな魔法陣に紙を乗せている。魔力を流すと一瞬で紙が消えた。

その横のさらに小さな魔法陣に向かって何やら小声で話している。

まだ裁判中にも関わらず、レイは思わずその様子を凝視した。

「じゃ、これで。レイさん、はい褒賞金。」

10ゴールドの価値がある中銅貨をレイに渡すと、ライバはスタスタと部屋を出て行った。

「レイさん、レシーアさんとミナさんの奴隷紋に魔力流してください。」

手のひらに収まった中銅貨を見つめるレイを尻目に、トムが淡々と事を進める。

「謀ったな。」

「いえ、時短です。前もって決めてたんで。」

レイはトムを睨みつけるが、スミスが割って入った。

「いいじゃねえか。他に良い策が無かったんだ。無罪放免にするわけにゃいかねえし。」

「そうです。そうです。オーガ討伐の褒賞金もタップリ貰いましたし。」

トムは魔法袋から金がパンパンに詰まった袋を取り出し、ニッと笑った。

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