33.戦闘準備
レイたち30人ほどが防壁の外に出た。レイ・トム・タック・フクン・ミナ・ジャミ、その他魔法陣が描ける奴隷たちだ。
「何で俺がこんな所いなきゃいけないんだよー。」
ジャミが情けない声を出す。
「いち早くオーガを察知するためだよ。警戒しなさい。」
ミナがジャミを諫めていた。
レイが奴隷たちに指示を出す。
「皆、防壁を囲むように魔法陣描くぞ。遅くていい。確実に発動するようにするんだ。」
『はい。』
レイと奴隷たちが隙間なく魔法陣を描いていく。
防壁から一定距離をとり、迷いの森に接する北東から2手に別れて作る。魔力を込めるのはタックとフクンの役目だ。レイとトムにおんぶされた2匹が完成した魔法陣に魔力を込めていく。
防壁上部歩廊の所では、迷いの森方向にスミスが新しい武器を設置していた。弓を撃つ奴隷たちも配置につく。
レシーアは他の魔術師と共に魔法発動の準備をしている。
迷いの森正面にライバ・レシーア・スミスと弓スキル・魔法スキルを持つBランクを中心とした冒険者たちがいる。その反対側、アウドとローミの町に面する門の上には冒険者ギルド長と副ギルド長、近接攻撃を主体としたBランク・Cランクの冒険者たちが警戒に当たっている。
「ううっ。臭いにゃあ。」
「気持ち悪い。」
タックとフクンが臭いに悶絶している。段々と悪臭が強くなっている。地震のように地面が揺れている。オーガたちが近づいているようだ。
防壁を囲むように魔法陣を半分ほど描いた頃、防壁の上で警戒していた衛兵が叫んだ。
「残り1時間ほどです。中に入って。」
レイたちは合流し町の中に入った。
レイは額の汗を拭う。
「全部描けなかったな。」
「仕方ないです。」
トムがなぐさめる。
「じゃ。タックとフクン頼む。」
『任せてにゃ。」
2匹の土魔法でアウド領とローミ領の方向に2か所ある門を中から塞いだ。オーク戦で門を破られた経験からだ。
レイがおんぶしていたタックをトムに託す。
「タックとフクンを頼む。」
「はい。レイさんも気をつけて。」
「分かった。」
レイは防壁を一気に登り歩廊を駆け抜け、レシーアの横に並び立った。
「どんな様子だ。」
「まずいわね。数が多いわ。」
レシーアの指さす先を見ると、森の中から大きな塊が近づいてくるのが分かる。奥が見えないくらい数が多い。
「ハイオークより大きいな。」
「あれでも単なるオーガよ。ハイオーガやキングオーガはもっと大きいわ。」
森の奥に目を凝らすと、オーガよりも頭一つ分大きな塊がある。あれがハイオーガらしい。
「キングオーガはいるのか。」
「いるわね。あれほどハイオーガがいるんだもん。」
「そうか。」
ハイオーガがキングオークと同じくらいの大きさだ。キングオーガとなるとどれ程の大きさになるのか。レイは気合を入れるように、フッと息を吐く。
「久しぶりだな。この感じ。」
「そうね。キッコーリ村以来ね。」
「やるか。」
「ええ。」
レイは腰から小さな杖を抜いた。レシーアも杖を構え、迷いの森へと杖先を向けた。




