32.任務失敗
「へっ?」
「はっ?」
皆一様に固まる。
「さっ。ちゃっちゃと準備しちゃいましょう。」
冒険者ギルドに入っていこうとするライバを止めて事情を聴く。
「ロックウッドの皆さんがいなくなったんで、国に依頼したんですよ。でも失敗しちゃいましてね。最悪の状況です。」
「勇者がいて失敗したんですか。」
ここぞとばかりにレイは勇者のことを聞いた。
「勇者がいたか分かりませんが、副騎士団長が瀕死の状態で。今、私の屋敷で治療してますよ。」
こんなところで油売ってないでと、ライバに促され冒険者ギルドへと入っていく。
冒険者ギルドの中は戦場のようだった。怒号が飛び交い、冒険者たちは殺気立っている。
「皆さーん。聞いてくださーい。」
ライバが大声を張り上げる。隅々まで届くような通る声だ。
「領主のライバでーす。オーガが来るまで4時間です。魔術師・弓使いの人は右の受付に行ってくださーい。配置決めまーす。」
冒険者のうち何人かが受付へと走っていく。
「その他の人は左の受付に行ってくださーい。門破られた時用に配置決めまーす。」
左側の受付に残りの冒険者が殺到した。
受付がてんやわんやとなっているのを見ると、ライバは「よし。」と言って、レイたちの元に戻ってくる。
「ん?あなたたちも行ってください。時間ないんで。」
どうやらレイたちも強制参加らしい。
レイはスミスと顔を見合わせた。あの武器を試す時が来たらしい。
レイはライバに急いで話しかける。
「自分たちキッコーリ村のオーク戦で戦った経験がありまして。」
「オークとオーガじゃ強さ全然違いますよ。」
「その時の経験で作った新しい武器があります。あと攻撃の魔法陣描けます。」
ライバはレイをじろっと見ると眼鏡を持ち上げた。そして大声で「ワンダフル!」と叫んでレイに言った。
「その武器見せてもらえませんかね。使えるかどうか私が判断します。」
スミスが魔法袋から武器を取り出す。
「ここに矢を置いて、ここを絞って打つ。方向を定めるのはここで。」
「ふんふん。」
スミスの説明をライバは熱心に聞いている。
「スキルはいらねえが、弓をセットする奴と目標に定めて矢を放つ奴、2人必要だ。」
「エクセレント!」
ライバが叫んだ。レイはスミスの説明に補足する。
「ただ慣れが必要だから、俺の奴隷たちにやってもらいます。」
「んん?」
「150人ほどいるんで。」
「ほ?」
ライバの目が少し飛び出した。




