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8話

 カオススライムの作り出した大穴を俯瞰できる位置に立ち思う。

 

「ていうか僕産まれてからまだ50年くらいだけどさ」

「はい、どうしました?」

「文明が中世くらいってことは人間ってもう軽く誕生してから数千年経過してるよね。不利過ぎない?」

「それでいうならば魔物はもう発生してから数万、数億年経っているのでは?」


 それもそうか。いや、でも情報アドバンテージとかがさぁ。

 と言いたいところだけど魔物にも何かしらのコミュニティみたいなのがあるかもしれないし独立勢力……どころか蛮族である僕が気にすることではないか。


「それで、何か思いついた風に最下層まで来ましたけどどうするんですか。あと暗いので光源設置しましょう。ここ」


 それくらいはお手の物なのでふよふよと浮遊する謎の光源をいくつか設置する。謎のエネルギーで発光する物体が闇を照らしたが、まぁ何もない岩肌だ。整備されてないトンネルというか、竪穴、岩肌というか。閉所恐怖症の人がいたらそれだけで発狂するくらいには暗くて何もない。


「まず僕がやろうと思ってることを発表します」

「おー」

「第一にダンジョン防衛手段の確保。スライムたちが強いらしいとはいえ、勇者がそれを余裕で越していたので安全を保てるくらいには揃えたい。そこら辺は教えてもらいたいね」

「任せてくださいよ!46℃の熱湯罠とかどうです?」


 そんな押すな押すな言われないと微妙に入らない、逆に言えば振られれば入っちゃうくらいの温度は罠とは言えない。

 死にたくはない。そして外の世界はかなり弱肉強食の世界であるらしい。つまり力がない奴は何されてもいい世界観だ。逆に言えばある程度の力を確保すれば僕が魔王だとしても発言力は得られるはずである。まずは防衛戦力。そして次に外に出せる戦力だ。


「第二に、家の整備」

「ずっと言ってますよね」


 いくら僕とはいえこんな屋根もないただの穴に住みたくない。日当たり良好な豪邸とは言わずとも屋根と壁に囲われた部屋くらいは欲しい。そしてそれが1つだけぽつんとしていてもおそらく日本の街に暮らしていた僕としては寂しいのである程度のなんというか、ごみごみ感が欲しい。そのためには知性ある生き物に住んでもらう必要はあるが……人間がこんなダンジョンの中に住むのは大変らしいと聞くのでそこら辺は要相談。あとダンジョンを汚されたら普通にキレそうなのでそこら辺の見極めも大事。


「第三にまぁ、神様に悪いしある程度の勢力拡大?勢力って言っても何すればいいのかわかんないけど」

「そうですね!ダンジョンマスターと言えばそれですよ!手始めにカオススライムを周辺に……」

「防衛戦力がそれしかいないのに回せるわけないでしょ。却下」


 というわけでやはり戦力増強。と同時にそれらを住まわせる居住区の拡大。


「ちなみにだけどスライムの居住区?を作るとしたらどんなのが良いと思う?」

「スライムは生活どころか食欲以外ないですよ。餌さえあれば文句言わないのでは」


 スライムにも快適に過ごしてほしかった……まぁいいや。それにしてもダンジョンマスター。すごい力だ。記憶にあるものを再現する能力のようだけれど、前世の記憶かつ朧げなはずの物品でさえおそらく完璧な姿で現実に再現されていた。そりゃ勇者がどうとか言ってる筋合いはない。というか別にこれで物作って売ってるだけで経済侵略くらいはできる。魔力なんていう勝手に回収される物しかコストかからないからほぼ0。ぼろ儲けなんだけど。


 まぁというわけで。経済的には大変恵まれた立場にいるのでやるべきことはそれを守る戦力の増強。それでもって経済活動を行うための自分の勢力……できれば表向きは人間に友好的な種族を僕の配下に置く必要があったんですね。今のところ姫様にやってもらうしかないのでここも割と急務。


「よし、じゃあまず上下水道を」

「ここまで来てそれですか!なんでそんなに上下水道に拘るんですか!」


 インフラだから。

 



 ◇◆◇


 うーん、やっぱり一本丸を通すだけだと耐久性がなぁ。ダンジョンとはいえ全てが管理化ってわけでもないし、どうしても生の地中だから生物とかいるかもしれないし。それにいくら魔力の貯金があるとはいえ素材に拘ると高く着いちゃうし。

 

「で、先ほどから色々な所でどんがらがっしゃん聞こえていますけど何してるんですかこれ」

「うちのダンジョンの構造。ホール型穴あきチーズレベル200みたいな構造してるよね」


 こう、丸いけど真ん中は凹んでて、穴がいっぱいあって……みたいな。

 

「絶妙に例えがわかりづらいですが……円柱状のダンジョンに中央の大穴、大穴の周りに大量の副穴と呼ぶべきものが空いてる構造ですね」

「そうそう、副穴。副穴が幾つかあるんだけど、所々崩れたりしてる所もあるし、ちょっと揺らしたら崩れそうなところもある」

「そりゃあカオススライムが掘り進めただけですしね。カオススライムの粘液が多少補強剤の効果を持っているとしても強く揺らせば壊れますよ。ダンジョンの機能で掘った訳では無いですから」

「というわけでダンジョン機能で揺らしたらどうなるのかって実験してみたら、普通に崩落した」

「何してるんですか!これ再度ダンジョンの機能で掘ってダンジョン化させてってすると魔力二重に使いますよ!」

 

 そうは言うけれど想定で言うと軽い地震ほどの揺れでちょいちょい崩れてしまったのだからこんなのでは冒険者?とやらが全力でタックルしたら崩落してしまうかもしれないじゃないか。僕はここを家と決めた段階で耐震補強工事は急務であるとしている。


「ダンジョン化?はしてるんだよね。魔力とかが吸収されてるってことは」

「釈然としない……そうですね。ただダンジョンの機能で壁などが自動で修復されるようにして、さらに丈夫にすることができます。都度魔力は消費されますがいちいちメニューから直すより楽ですし、最終的なコストも減る仕様です。なので基本そうするのが多数派です。そこまでした場所をダンジョンである、と定義するダンジョンマスターもいるくらいには」


 なるほどね。まぁ確かに冒険者が集団で唐突に壁に張り手をしながらどすこい言い出すかもしれないし、全然関係ないところからドリルで穴を掘りまくって新しいトンネルを開通させてしまうかもしれない。そうして破壊されたのを都度僕が直すとなれば、今は良いが後々めんどうくさいというわけだ。


「意図的に崩落させたい場合はどうするの?例えばだけど最悪道全部塞いで壁を金属とかにしちゃえば最強のダンジョンじゃん」

「入口がないダンジョンはダンジョンと認定されませんので、ダンジョン機能のほとんどを制限されますよ。世界的には魔力の通り道が狭いと魔力で扱うダンジョンメニューもうまく扱えないということになります。それにそんなことしたら拡張できないじゃないですか。正面入口の再設定は結構魔力使いますし」


 最初の数年間はボーナスで入口が狭くてもある程度までメニュー機能を扱えますが……という小声が聞こえたけど気にしなーい。最初の数年間?数十年じゃい。

 まぁでっかいダンジョンにするのが一応神様、というかダンジョンマスターの目的で、大規模なダンジョンにするならそれらしく入口はでっかくあれってわけね。逆にダンジョンの規模に分不相応な入口を建ててしまった場合はすぐに滅ぼされてしまうと。抜け穴がありそうだけどぱっと見は問題なさそうなルールだ。

 

「話それるけどそれだとうちは入口最大級ってことになる?」

「そうですね。ダンジョンメニューはほぼすべてが解放されているのではないでしょうか」


 勝手に崩落したらしいカオススライム君の開けた初期スポーン地点、通称大穴だけどメイン入口に設定されている。なのでメニューが解放されているというわけだ。助かる。これ以降思い付きでやろうとしたことはできれば問題ない。できない場合は今後もできそうにないということがわかった。


「修復が勝手にされるとしてもタイムラグがあるから、一瞬壁が消える分には問題ないと……」

「なんかとんでもないこと考えてそうですけど、一応この軍の頭脳担当(ブレイン)には聞かせてくださいね」

「驚かせたいから小出しにするね」


 僕は悪戯好きなのだ。……と思っていたがポコポコ殴られて痛いので僕の悪戯計画の一部を公開することになった。弱い体が憎い……!


「まずはこの副穴から続く通路、最終的には全部をこのメインホールの下……居住区まで繋げるんだけど。今のままだとほぼ全ての穴からスカイダイビングか岩肌を這ってもらう形になる」

「そういった種族の魔物に限定すれば。種族を絞ったほうが魔物同士で喧嘩しにくいという利点もありますからね」


 うん、ボケたのに現実的に受け止めないで欲しい。


「というのは無理で、何故なら僕は人間も住まわせようとしてるので……」

「そうですね。勇者は何とかなりそうですけどお姫様はどうしようもないですからね。とはいえ待遇的には亡命者、実質的に捕虜なのでそこら辺は配慮しないでもいいのでは?」

「ん?ああ、違うよ。もっと大々的に人を住ませようかなって」


 ダンジョンメニュー、それもダンジョンに設置する施設のところを見るに環境自体はどうとでもなりそうだからね。


「えーっと……マスター、あなたはダンジョンマスターであり、自由にやってよいと言われていても一応現状は魔王なのですが……何のために?」

「わかってないねリード。人間ってのはね、魔物みたいなのは適当に襲ってもそんなに怒られないけど、人間が人間を襲うのはある程度の時間と理由がいるんだよ」


 なおタガが外れていない人間に限る。どこにも制御の利かないやつはいるのだ。とはいえそんなものは野生の獣も一緒なわけで。


「つまり建国……とまでは行かないまでも一端の『人類に協力的な勢力』へなればいい。それをするには人間を住まわせて、私たち幸せですよ~ってアピールしてもらいつつ、偉い人たちには賄賂を渡す」

「なるほ、ど……?え、じゃあ魔物とかは?召喚した魔物に冒険者を襲わせたり(トラップ)で人類を惨たらしく殺したりは……」

「それもしたいね。現状考えてることをするにはどうしても魔力が必要だから、それするには人間ぶっ殺しゾーンした方が効率いいっぽいし」

「ですよね!安心しました!」


 冷静な頭で考えると物騒な会話だ。勇者とかに聞かれてないかな?一瞬で切り伏せられそう。


「人間は勝手に殺すと怒られるからね。殺す理由を作ってぶっ殺せばいいかなって」

「なるほど……」

「つまり最終的には上下水道になるわけなんだけど」

「全然わかりません」


 上下水道が整備されてる方が人間住みやすいに決まってるじゃん?

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