13話
山賊であろう存在が村に迫っているのはわかった。もしかしたら交渉で終わる可能性はあるし早とちりするわけにはいかないが。
「うーむ、やはり目と耳が欲しい。できればドローンみたいなの」
「……スライム以外召喚すればいいんじゃないですか?スカウトスライムとやらだって回りくどいというか、知能ある魔物に【念話】のスキルを覚えさせて斥候させればいいだけな気が」
そんなこと僕だってわかっている。でもここまで来たらスライムだけでやりたいじゃん!スカウトスライム情報網だって結構頑張って構築してるんだよ!
とりあえずリアルタイム映像は確認しよう。勢力範囲内であればダンジョンメニューから映像を確認できるし、どんな雰囲気かだけなら映像で見れば判別できるはずだ。
「まだダンジョンじゃないから地上の様子が見えない……!」
「どうですか、私と似たような見た目の種族なんですけど妖精種というのがいまして。飛べますし知性はありますし人間とも関わり合いがある種族なのでマスターのご要望にもピッタリ!」
「くそー、大人しく召喚するしか……ん?妖精種?」
僕と連絡が取れて、空から見られて、万が一人間にバレてもそんなに害がない存在、かつ今から召喚しないで済む。
「あの、マスター?なんですかその目は。行きませんからね!?私だってダンジョン内でぬくぬくしていたいんですから!マスター!あの!」
頑張ってくれ頭脳担当。君が一番適任なんだ。
◇◆◇
「えーと、何々?『まさかこんな辺境に食料を余らせてる村があるなんてついてやしたねお頭ぁ?』って。すごいな、ここまでテンプレの台詞吐く三下キャラの盗賊っているんだ」
リードからリアルタイムでチュートリアル情報として視界内に文字と映像が伝達されてくる。音声は相変わらず拾えないようだがその分字幕を出してくれているので対して困らない。映画は字幕派だったのでなおさらね。
「『女は捕らえて、男はそのまんま殺しちまえ』と……交渉の余地はなさそうなタイプだね。一応第一条件は達成っと」
穏便にではなくなるべく過激に済ませてほしかったからね。とりあえず盗賊側、村人側。どちらを囲うにせよどちらかを救済した立場の方がダンジョン側として交渉しやすいし。
「お、村人たちが賊に気づいた。さて……相変わらず狩人っぽい人と若者は武器を持つな。勇敢だぁ」
僕だったら一目散に逃げると思うけど。自分の命が第一だ。第二?面白さ。
さて村人たちが相談しようとしているようだけど賊はもう迫ってきている。お、老人が大きな音のしそうな金属を叩きながら避難を促し始めた、フライパンとおたま装備したお母さんと同じ武装だ。しかしこれがまさに争いのゴングのような役割を担ったのだろうか。最初の被害者はその目立っていた老人。投げつけられた剣により腹部を貫かれ絶命したようである。投げた時オーラみたいなエフェクトが武器の周りで薄く光っていたけどあれも魔法なのかな?
武器を持った盗賊たちが男たちに襲い掛かってる。女子供は逃げていく。現実感がないのは先ほどからたまに放たれている火や岩を飛ばす魔法のせいなのか。リードが送ってきている情報を視界で処理しているからなのか。
逃げまどう人たちと、相手が戦い慣れしていることを悟った村人たちは全てを捨てて逃げることにしたようである。はっはっは。ここまで想定通りだとまるで自分が賢くなったような気さえしてくる。彼らは男性たちを殿に真っすぐダンジョンへと向かっているようである。盗賊たちは3割を村に残し残党探しと略奪に当てるようである。残り7割はなんと追撃だ。何の得があるのだろうか。
というところを見届けたようでチュートリアル画面が中断される。そしてリード専用の超極細通路から今回の仕事人が帰ってきた。
「おかえり。助かったよ、ありがとね」
「流れ魔法が飛んでくるかもしれない環境は二度とごめんです……チュートリアル妖精をこんな使い方させるとは」
似たような状況があったらまたやってほしいって言ったら怒るかな。怒るだろうな。僕は怒るだろうことは口に出さないという選択肢ができるダンジョンマスターなので視界をメニューに戻す。少々距離があるとはいえ全力で逃げているのだ。村人たちも半数ほどはここまで逃げ切れたようである。ということは盗賊たちもすぐそこまで迫っているのだろうか。
「うーん、どうしよっかな」
「今度は何に悩んでるんですか。お教えしますよ、懇切丁寧に!チュートリアルを!」
若干根に持ってそうだ。
「村人たちをこのまま匿うにしてたぶんそこまで奥にはいかないだろうね。今も動かせる岩とか使って必死に障害物というか衝立を作って侵入を防ごうとしてる」
「彼ら視点で今まで何もなかった、とはいえ今後何があるかわかりませんからね。前回までの探索時もかなり慎重でしたし」
僕が盗賊を殺害する様子というのはあまり見せたくないんだよな。人間ってのは力ある存在を恐れてくれる分にはいいけど、憎んだり裏をかこうとしたりする気がするから。
「マスターの悩みが全然わかりません。必要以上に安全マージンを取りつつ縛りプレイしようとして苦労してませんか?」
「まぁそういうことだよねぇ。どこまで攻めるか……」
こういう時は状況と勝利条件整理しよう。第一条件は簡単、僕の命の確保。できれば寿命で死にたい。第一条件を前提にして、次の目標は何と置こうか。勢力拡大?ダンジョン成長?人間ぶっころ?神様的には勢力の拡大かな。
神様どうですか?え、僕が面白いと思うことすればいい?
なら努力目標は面白いことするでいいか……今のところ楽しんでいるのは箱庭作り。時点で防衛網の構築という意味で防衛シミュ。これらが面白いので採用。つまり箱庭に住まう住民たる村人の保護と、外敵たる盗賊の処理。住民のヘイト管理なんていう都市繁栄シミュレーションに関してはおいおい考えよう。
ゲーム感覚で申し訳ないが盗賊君たちには消えてもらうとして、うーむ、どうやって殺すのが一番面白いかだよなぁ。
◇◆◇
「岩置け岩!」
「女子供は奥へ逃がせ!いくら大穴様とて元は貪欲の大穴だ!奥まで行かせ過ぎんなよ!」
「スライムが出たら積極的にやれ!村が今どうなってっかわかんねぇぞ!」
あの時調子に乗って無駄にダンジョン内で取れた飯を使ってお祭りなんてやったのがいけなかったんだ。あれのせいで飯炊きの気配……村がこの地に置いて異例の食料と水分に困ってない村であることが知られてしまった。それが近隣の村か、それとも流れの賊かわからないが嗅ぎ付けられたにちげぇねぇ。あの戦闘に慣れている感じは帝国から流れてきた傭兵崩れか王都でやらかした元冒険者か?もっと早くに気づけばもう少し逃がせたかもしれないのに、今となっては村人はもう半分程度になってしまった。俺も妻と娘は逃がせたが、恐らく両親は……憎いが、俺にはあそこで状況を覆すような力はなかった。
あの賊たちのうるさい声が洞窟内に響いた。ここがダンジョンでない以上村を襲ったような魔法は打てば崩落の危険がある。あいつらも自分たちの命を危険に晒すような真似はしないだろう。幸いにも最近ここで戦っていた俺たちは柄の短い物を持っている。長物と比べれば振り回すのに苦労はしない。やれるはずだ。……手が震える。やるんだ。やるしかない。
そう思い戦列に加わろうと前へ行くと、殿を務めていたやつらがぽかんと口を開けていた。何があったのかと思い首を伸ばすと、感じたことのないほどの熱波が肌を炙った。なんだぁ!?
◇◆◇
火炎罠をAの101に設置、よし来た起動。Aの10番に置いた毒針発射トラップは時間差で起動するようにして。あ、盗賊の一部が逃げようとしてる!逃がすわけないだろ!入口は既に落とし穴でカオススライム君プール直下でーす!ABCDの1を全開放!
「えーと、マスター、今話しかけて大丈夫ですか?」
「まぁ平気。罠で攻撃してるってことがバレたみたい。盗賊たちの斥候役かな、が警戒しはじめた」
バカめ!それはダミーだ!まさかダンジョン側がこんな罠っぽい見た目に掘られた窪み、その逆側に罠を置いているとは思わなかっただろう!
「まずですね、なんでそんな威力の低い罠をちまちまと?これが勇者だったら鼻息で消し飛んでますよ」
「さすがにそれは言い過ぎ……じゃないのかな。とりあえずコストをなるべく抑えるってのが1つ。居住区とか上下水道作って結構使っちゃったし」
実は当初200万あった魔力は既に10分の1くらいになってる。感覚でしかわかってない預金残高で考えていただければどれだけ使ってしまったか恐ろしくなることであろう。逆に言えば貯金の9割使えば居住区の整備はできるのである。リードが無駄使いしやがってみたいな顔をしているがこれも僕の盛大な次回作への前振りなので許してほしい。
「……まぁいいでしょう。で、その罠の設置ですが……何をどうしてるんですかこれ」
「これ?ダンジョンメニューの地図を2D表示にして、地面をグリッドで区切って現実と同じように動く戦略シミュレーションみたいにしてみた。リアルタイムで罠置いて盗賊が罠置けば勝ち。直感で操作できるから楽しいよ」
家畜とかを牧場に誘導する要素と4種類くらいの罠から適切なのを選ぶっていうパズルゲームみたいな面白さがあるよ。




