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4.巡回中

前話の終わり部分を少し変更してます。


「今日もいい天気だねえ~」


フィオラが能天気に上機嫌な様子で歩いている。


事件が発生してから、数日が経ったが、リイナとフィオラは初日と変わらず街を巡回している。

調査としての意義はオーレンから説明があったため理解はしているが、やっていることとしてはプラプラと街中をお散歩しているだけである。


リイナとフィオラが石板を持って街を巡回すると、石板が周辺大体半径1キロメートルまでの魔力を探知する。国に登録されていない魔力を検知すると、その魔力を記憶するらしい。

石板上の赤の光は、検知した登録外の魔力の位置を示しており、青の光は石板の位置を示しているそうだ。赤い光の位置によって大まかな魔力の発生元の位置がわかるらしいが、オーレンから、リイナとフィオラがその場所を特定するようなことはしないでいいと繰り返し言われた。魔力の発生源に下手に近づき、登録外の魔力の持ち主、おそらく非合法的な人物を刺激するようなことになってはいけないからかもしれない。一度検知した魔力は、石板を持ち帰った後、研究員による解析が行われることで詳細がわかるとのことだ。



二人が歩いていると、魔法警務部と思しき集団がいるのが見えた。


事件が発生してから街は落ち着きを取り戻しているが、巡回の数が増えて警備が強化されているようだ。


「あ、魔法警察だ~」


魔法警務部は、各地域に魔法警察署があり、魔法警察、いわゆる町のお巡りさんとして地域の治安維持に努めている。リイナは小さいころから魔法警務部を目指していた。


リイナは、先日の事件があってから、少しは評価されて魔法警務部への転属、なんてことになるか淡い期待を抱いたのだが・・・そうそう現実は甘くなかった。


(私も魔法警務部に入りたかった・・・)


遠い目で魔法警務部を眺めていると。



「あ、リイナさんですよね。こんにちは」


後ろから声をかけられた。リイナとフィオナが振り向くと、柔和な笑顔を浮かべた男がいた。

先日カイルの病室で出会った、イーライと言ったか。王都騎士団の六番隊副隊長を務めていたはずだ。水色の髪に濃紺の目をした二十代くらいの男性で、人当たりのよさそうな印象である。


「イーライさん。こんにちは」


『え、リイナちゃん、騎士団の人と知り合いなの!?紹介してー!!』


フィオラがリイナを小突いて耳元で騒いでいる。


「イーライさんは、先日助けていただいたカイルさんの同僚の方で、カイルさんのお見舞いに行ったときにお会いしたんだ。こちらは同僚のフィオラです。」


リイナが説明すると、後ろからぞろぞろと騎士団の人々がやってきた。


「あ、カイルさんに一撃食らわせた女の子だ」

「あんな華奢な子がカイルさんをしばらく再起不能にするなんてすごいなー」


むさ苦しい男が十人ほど近づいてきたが、少し距離を置いて遠巻きにリイナたちを眺めてくる。騎士団の制服を着ているため、イーライの同僚だろう。

リイナを見て口々に何か言っているが、あまりよろしくない評判が立っているように思える。


「うるさくてごめんね。この前の事件があって、我々騎士団も町の巡回を強化していてね」


イーライを改めて見ると、むさ苦しい男の集団の中で比較的体の線が細く、中性的な雰囲気である。柔らかい口調で話すため人に警戒心を抱かせない感じがする。始めこそ敬語を使っていたがすぐにタメ口になり、人の懐に入り込むのが得意そうだ。


「そういえば、今度の調査任務、我々も同行することになったみたいだよ」


思い出したようにイーライがリイナとフィオラに話すも、二人とも何のことやらピンと来ていない。


「あれ、聞いてない?話しちゃまずかったかな。聞かなかったことにしておいて」


イーライがはにかみながら頭をかいた。


(調査任務?この毎日のお散歩のことだろうか?)


リイナ、フィオラが事件後、数日間変わり映えなくお散歩していることを、オーレンは一応”調査”と呼んでいた。もしこのお散歩にイーライたちがぞろぞろと付いてくることを考えると大分シュールな絵が想像された。

そもそもお散歩しているだけで騎士団が付いてくる意味が分からない。


「そういえば、リイナちゃんを助けてくれた騎士様はどちらに?」


リイナが色々と考えていると、フィオラが遠巻きにこちらを眺めている騎士団の隊員たちを見ながらイーライに聞いた。


「ああ、カイルさんは今日退院するみたいで、明日から復帰だから今はいないよ」


「そうなんですか!」

「明日から復帰できるというと、予定より早かったですね」


この前お見舞いに行ったときは退院まで一週間ほどと聞いていたが、予定より早まったようだ。


「あの人の回復力もすごいよね、でもせっかくだからもっと休めばいいのに」


イーライがぶつくさと言う。


「騎士団の隊長さんは大変ですねえ」


フィオラがしみじみと言ったところで、遠巻きに眺めていた騎士団の隊員たちが近づいてきた。


「イーライさん、いつまで女の子たちとイチャついてんすか」


「ズルいっすよ!」


むさ苦しい男たちがイーライに文句を言うと、リイナたちに口々に話しかけてきた。


「あ、リイナさん、握手してください」


「カイル隊長を退治したリイナさんだぞ、握手してもらうとご利益がある」


「俺も握手してください」


「フィオラさんも握手してください」


「連絡先教えてください」


リイナたちは謎に男たちに囲まれて次々に握手を求められた。


「ちょっと、お前達、リイナさんたちが困ってるだろ、調子に乗るな・・・」


イーライが隊員達を抑えようとし、目に入った人物を認めると顔を引き攣らせた。

背後から影が伸び、数名の隊員が気づくと同時に青ざめた。


「ゲッ」


「お前達、巡回中に何してんだ」


リイナとちょうど握手をしていた隊員に、ゴツン、とゲンコツが落ちる。


「カイルさん!」

「カイル隊長!」


今日はまだ出てこないんじゃなかったのか、と隊員達が口々につぶやく。


「うちの隊員が調子乗ったようで。後でしっかり締めておくんで」


隊員達を一瞬で青ざめさせたのは、王都騎士団の六番隊隊長のカイルだった。

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