第64話 思い出の公園で、君と
放課後になって、ぼくは家に帰って、お風呂に入り、それから自転車で公園に向かった。
だだっぴろい遊具で遊んでいた子供たちがちらほらと帰っていく夕暮れ時、待ち合わせのベンチでつゆちゃんは座っていた。
結構、急いで来たんだけどなー。
すでにつゆちゃんがいる。
そこらへんに自転車を置いて、つゆちゃんにめがけてまっすぐ歩く。
少し息切れをしながらも丁寧なあいさつを心がける。
つゆちゃんにはよく見られたいからね。
「待たせてしまってすみません、つゆちゃん」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「隣に座ってもいいですか?」
「はい、もちろんです」
少し距離を空けて座る。
ぼくの体臭は大丈夫だよね?
臭くないよね?
さっきお風呂に入ったから大丈夫だと思うけど、自転車で走った時に少し汗かいたから……
汗の臭いがするかも……
つゆちゃんにはバレないように首を下に傾けたり、腕で汗を拭くフリをして臭いを確認した。
大丈夫だ、臭くない。
ぼくは安心したところで、話の本題に入ろうとする、が——
え……つゆちゃんの好きな人は誰ですかって今、言う?
ちょっとタイミングとしては違う気がする……
とりあえず、別の話題をしてから話そう。
「外の景色がとても綺麗ですね」
「そうですね」
ぼくたちはお互いに顔を向けることなく、ただまっすぐに夕日に当たる遊具を見ながら話した。
「……」
「……」
ダメだー、話が続かない。
むしろ、空気を悪くして余計に本題を切り出しにくくなったよ……
一体どうすればいいんだ……
この何とも言えない空気を破ってくれたのはつゆちゃんだった。
「さとしさんと初めてここで会話した時は昼間でしたね」
「そうですね」
「あの時は、さとしさんがとても辛そうにしていたのをよく覚えていますよ」
から笑いをしながらぼくは答える。
「ははは、そうですね、恥ずかしいことに……」
下を向いてしまうぼくにつゆちゃんは。
「そんなことはありません。恥ずかしいことなんてないですよ」
とずっと遊具の方をみながらつゆちゃんは話し続けた。
「あの時のさとしさんと会話した私が会話の最後に言ったことを覚えていますか?」
「えっと……」
もちろん、すべてのことを覚えている。
だが、どれのことを言っているんだろう……
ん~っと過去の記憶を辿って思い出そうとしているところ。
「何かあればいつでも話に来てくださいね、と申し上げたのですが覚えていらっしゃいますか?」
「もちろんです」
「今日、重要な話があって私を呼んだのでしょう、さとしさん?」
「はい」
「何でも話してくださいね」
つゆちゃんはぼくが本題を話しやすいように運んでくれたのだ。




