第63話 揺れる心と一つの約束
つゆちゃんが会長のことを好きではないか、と考えた日から数日。
ぼくは票集めに集中できないでいた。
集中しないどころか、カップルあみだの参加者にお願いして回るなんて一度もしていない。
もちろん、お願いしていない理由の一つにぼくは陰キャであるから知らない人に話しかけること自体が難しいという部分もある。
だけど、一番の理由はつゆちゃんのことを考えれば考えるほど、自分はこんなことをしてもいいのだろうか、と考えてしまうからだ。
もしも、ぼくたちが選挙で勝ってルール変更を成して『自由に別れてもいい』となれば、自分が望まなければ別れなくてもいい、となるから良いのではと思うかもしれない。
だけども、別の視点で考えてみたら別れたくない相手と別れてしまう危険性があるのだ。
もし、つゆちゃんが会長のことが好きで今回の選挙の項目に反対しているのだとしたら?
ぼくは好きな人の邪魔をしているのではないか?
他にも、ほとんどの参加者が反対をしているというのに票集めを勤しんでもいいのだろうか?
彼らは別れるのが嫌だから、今回のアンケートで反対をしたのではないのか?
それらを考えると、ぼくは票集めに全力になって取り組むべきではないのではないか?
このままだと票集めに集中できないから、休み時間中にぼくは『放課後に話したいことがある』とつゆちゃんに言った。
そうしたら、つゆちゃんは学校だとみなさんがいるので違う場所なら、ということでぼくの家近くにある公園で会おう、となった。
その公園はつゆちゃんとぼくが中学生の時に初めて会話した場所。
覚えているかな、つゆちゃん?
そこは、つゆちゃんとぼくの思い出の場所なんですよ?
ぼくはその思いをつゆちゃんには告げずに、あのとても大きい公園のどこで待ち合わせをしますか、と尋ねたところ。
「さとしさん、私たちが中学の時に話した公園のベンチを覚えていますか? そちらでいかがでしょうか?」
「はい、お願いします」
さすがはつゆちゃん。3年経っても覚えていた。
なんだか心がほっとする。
覚えていてくれてありがとう。




