第39話 ギリギリの約束と明日の約束
「ふーん、なんでもねー」
副会長は、顎に手を当てて考え込む。手応えを感じた!
「うん! なんでも!」
ぼくは力強く頷く。
「今は別にして欲しいことないんだけど?」
……え? ないの?
「あ、いや! 今じゃなくていいんだ! あとで、副会長に『これやって!』って頼まれたら、聞くから! なんでも!」
「そう、それはいいわね」
副会長は、意地悪そうな、しかし、少し楽しそうな顔になった。
ぼくは、心臓がバクバクしながらも、手ごたえを感じていた。
「……仕方ないわね。アンタの話を聞いてあげてもいいわ」
「ほんとに?」
「ええ、何でも言うことを聞いてくれるならね」
「聞く、聞く! なんでも聞く!」
よし、これで東京湾に沈められずに済むぞー!
「ただし、一つ条件があるわ」
「なに?」
条件? なんでも聞くって言った手前、断れないぞ……。
「今日は喋る気まったくないから、明日の朝なら壮馬くんと話してもいいわよ」
「え……」
明日⁉
ダメだ! 今日中なんだ! 今日中に話さなきゃ、ぼくは壮馬君に東京湾に沈められるんだ!
「嫌なの?」
副会長が、少し首を傾げた。
——嫌? 嫌も何も、今日中に話をさせないと、ぼくは壮馬に東京湾に連れていかれるんだぞ⁉
明日じゃダメなんだ! 今日の24時までなんだ!
「どうしても、今日じゃダメ? なんとか今日にしてもらえないかな……?」
必死に食い下がる。
「ダメ」
「あ、あのさ! じゃあ! おごりはしないけど! 飲食店で、何か食べながら壮馬を待つのはどう?」
「そこは、奢りなさいよ!」
「お、奢ったら来る?」
「別に行かないわよ。アンタと飲食店でいるのも嫌だし」
……ダメだ。何を提案しても、今日会うという選択肢がないらしい。
どんなに引き留めようとしても、無駄だ。
どうやって、副会長を今日中に壮馬と話させるか……必死に考えていると。
「明日が嫌って言うなら、もうこの話は無しよ」
「とんでもございません。メッチャ嬉しいです。明日でお願いします」
……やばい。本当に話が流れる。
明日の朝なら壮馬に許してもらえる可能性がある。
これに賭けるしかない。
「そう。場所と時間はあとで、メールで送るわ」
「分かった」
ぼくは、副会長と別れた。
すぐさまスマホを取り出す。
『さとし:副会長は今日どうしても外せない用事があるから、話せないだって』
すぐに既読がついた。
『さとし:でもね、明日の朝なら、話ができるらしいよ』
『壮馬:そうか』
『さとし:1週間以内に話せる場を提供できなかったけど、許してくれるよね?』
『壮馬:まぁな。明日の朝、本当に話せるのならな』
任せろスタンプを送って、スマホをポケットにしまった、その時。
ピコンと通知音がしてLIMEを確認する。
『壮馬:明日の朝、何時でどこで話すんだ?』
ああ、そうだった。
伝えるのをすっかり忘れてた。
『さとし:あとで教える。副会長があとで話す時間と場所をメッセージくれるから』
『壮馬:桃香ちゃんとメッセージのやり取り?』
『さとし:カップルあみだで電子メールを知ってるだけだから。用事がある時だけ使ってるだけ。しかも、使ったのはほんの数回で、何個か無視されてるから』
『壮馬:ふーん』
『さとし:とりあえず、あとで場所と時間を伝える、ばいちゃ』
「はぁー」
ドッと疲れた。
なんか、今日のLIMEのやり取りだけで、ものすごく神経を使った気がする。
疲れた……帰って寝よう。
帰宅途中、副会長からメッセージが届いて、HRが始まる40分前に4階にある空き教室に集合ってなって、壮馬にも伝えた。
で、マンション3階にある自宅に到着して、単身赴任でお父さんがいないぼくたちはお母さんと妹、ぼくで夕飯を食べた。
そのあと、学校初日はどうだったと妹に聞いたところ、『普通』と当たり障りない話をして今日を終えた。




