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第38話 必死の時間稼ぎと最後の切り札

「ところで、副会長。このあとって暇?」


「暇じゃないわよ、家に帰るわよ」


「じゃー、家におじゃましても?」


「そこで、なんで『じゃー』になるのよ‼」


「え、家にお邪魔したらダメなんですか?」


「当り前じゃない。アンタを家に入れたくないし、知られたくもないわ」


「えええ、分かったよ。ここは譲歩する! ここで、もう1、2時間くらい話さない?」


 2時間あれば、壮馬君をここに呼び出して、副会長と会わせられる。


 時間稼ぎ作戦だ!


「なんでそうなるのよ、話さないわよ! わたしは早く帰りたいのよ」


「そこをなんとか!」


「無理」


「どうか、お願い。今日中に副会長と話をしたいんだ。いや、しなければならないんだ」


「今、しているじゃない」


「そういうことじゃないんだ!」


「じゃー、どういうことよ?」


 どう説明したものか、壮馬がここに来るまでの時間稼ぎの会話だなんて言えないし……


「説明はできないけど、でも! 今日中にいっぱい話をしたいんだ」


 副会長は、ぼくを少しの間、何も言わず、じっと見つめた。


 そして、深い、深いため息をついた。


「はぁー……わたしとどんな話をしたいわけ?」


「おお、2時間ほど話をここでしてくれるってこと?」


「違うわよ! 1、2時間も取られるくらいに重要な話をしたいんでしょ? どんな話をアンタはしたいのよ?」


「え……」


 重要な話なんて、これっぽっちもない。時間稼ぎしたいだけ。


「え、なにもないの?」


「え、えっと……世間話、かな……?」


「はぁ? 帰る」


 副会長は即座にブランコから立ち上がり、公園の出口の方へ歩き出した。


「まって、まって!」


「待たないわよ」


 こちらに見向きもせず、足早に歩き続ける副会長。


 ぼくは慌てて横に並んで歩いた。


「お願いだから、ぼくとほんの少しだけでもここで話そうよ」


「いやよ。あと、近い! 離れて!」


「あ、うん」


 言われた通り、1メートルくらい距離を空ける。


「副会長、お願いだからここで話そうよ」


「しつこいわねー。どうしてそこまで必死なのよ」


「……」


「言えないのなら、帰るわ」


 やばい。このままじゃ本当に帰られる。壮馬との約束が……


 ——もう、本当のことを伝えるしかないのか?


「実はぼく、今日中に副会長と話せる場を提供させるって同じクラスの伊藤壮馬と約束したんだよね」


 副会長は、ピタリと足を止め、一瞬、目を丸くした。そして――


「……はぁっ⁉ バカなの⁉ アンタ何してんのよ!」


「複雑なことがあって、それでこんな約束をしてしまって……」


「わたしは嫌よ。壮馬くんに会うなんて」


「もしかして、知り合い?」


「まぁ、知ってるわね」


「じゃー、会って話をしてあげて!」


「嫌よ」


「そこをなんとか!」


「いーや!」


「もしも、副会長が会ってくれないとぼくは東京湾に沈められる」


「勝手に沈められなさいよ」


「まだ死にたくない! お願いだから、壮馬と、話してあげて! 少しだけでいいから!」


「嫌よ」


 副会長は、一切譲歩しない。


 どうする⁉ このままじゃ本当に東京湾行きだ!


「分かった! なら、自分ができる範囲で、一つだけ、何でも言うことを聞くから! お願いします!」


 最後の切り札だ! どんな無理難題でも、一つだけなら聞いてやる!


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