第36話 復活の副会長と選挙の話
……ん?
「もう! ショックすぎて!」
副会長は、そう言って、再び項垂れた。
「えっと……それで全部?」
「ええ、そうよ」
…………
「え、そんなことで落ち込んでたの⁉ しょうもな!」
心配して損した、とは、まさにこのことだ。
「はぁ? しょうもない⁉ わたしにとったら一大事よ!!」
副会長は、ギロリとぼくを睨んだ。いつもの覇気が戻っている。
「この恋愛高校が、経営破綻するかしないかくらいに深刻よ! 意中の相手に『嫌いになりそう』って言われることが、どれだけヤバいことか分かってるの⁉」
「どんだけだよ! どんだけ、会長の好感度が重要なの⁉ 会長の意見にめちゃくちゃ左右されるじゃん!」
「当り前じゃないの!」
副会長は、ぷんすか怒っている。
さっきまでの落ち込みはどこへやら。
「てか、『ちょっとだけ嫌になりそう』って言われただけだよね? ちょっとだけだよね?」
「そうよ、ちょっとだけ嫌になるだけでも深刻に決まってるじゃない。何のために今まで会長の好感度を上げるために頑張ってきたと思っているの? そのちょっとは、わたしが半年分頑張った成果くらい貴重よ‼」
「好感度を上げるのにそんなにもかかるのか? それ、会長に嫌われてるんじゃないの? それかキモがられているのかどっちかだな」
もしも、ぼくがコイツの好感度をちょっとだけでも上げようと頑張るならば、半年くらいはかかるだろう。だって、嫌われているから好感度を上げるのはものすごく難しい。
ましてや、副会長の場合、生徒会で会長と一緒に活動していて、接点だってぼくより圧倒的に多いはずなのに、「ちょっとだけの好感度」を上げるのにそんなに時間がかかってるなんて……
――どう考えても、嫌われているとしか思えない。
「なんでそんなキモイ発想になるのよ! ただ、会長はたくさんの人たちに愛を与えているから、今以上に親密になるのが難しいだけよ。当り前だけど、今は結構な親密度あるわ」
「それって本当なの? 副会長が会長と仲良くしているところなんて見たことないんだけど? どちらかというと、生徒会で何かある時に頑張って会長に話しかけているようにしか見えなかったんだけど?」
もちろん、これはでまかせである。
ぼくは自分のクラスで、つゆちゃんを眺めることだけに情熱を燃やしている人間だ。
会長や副会長が、生徒会でどんな活動をしているかなんて、知る由もない。
「うぐ……そ、そんなことないわよ……」
図星だった。
なんて分かりやすい動揺と表情なんだ。
「はいはい、そんなウソをつかなくても大丈夫だから。所詮、副会長はあの騒がしい会長の取り巻き女子と変わらんってことだ」
「そんなこと……ない……もん……」
目を潤ませ、悔しがる副会長の姿はなんとも言い難い姿だった。
ああ、ちょっと言い過ぎたかもしれない。
なんか、可哀想になってきた……
「まぁー、副会長なら可愛いし、彼女にしたいランキングで上位は必ず入っているだろうから、がんばったら会長と付き合えるよ」
これは事実だ。副会長は、見た目はかなりレベルが高い。性格はともかく。
「ふん、当り前じゃない」
「そうそう、だから選挙を頑張って、成功したらぼくたちは別れて、副会長は会長とお付き合いをする」
「そうよ‼」
おうおう、元気が出たようだ。よかった、よかった。これで一安心だ。
……ん? 一安心? なんか、大事なことを忘れているような……?
まぁ、いいや。選挙について聞こうっと。




