第32話 警察官と事情聴取
「あの~、すみません」
後ろから、落ち着いた声で話しかけられた気がした。恐る恐る振り向く。
「警察ですが、お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
目の前には、警察手帳を広げた2人の男性が立っていた。
警察官が来ちゃったよおおおおおおおおおおお!!
「あ、はい」
「生徒さんですか?」
「はい、高校2年です」
「どこのですか?」
「恋愛高校です」
恋愛高校と答えた瞬間、警察官たちの顔が少しだけ強張った気がした。
この学校、世間的にどう見られてるんだ……
「一体ここで何を?」
一体ここで何を……ん~、どう説明したらいいんだろうか?
「ここでショッピングしようと思って、帰ってくるまでの間、誰かにこの自転車を持ってくれる人を探していました」
「あちらに駐輪場がありますが」
警察官一人が駐輪場に指さす。
え、理由を言うの?
ちょっと恥ずかしいんだけど……
でも、正直に言わないと余計に怪しまれるよな……
「お、お金を払いたくなくて、つい他の人に自転車をほんの1時間だけ預かってもらおうと……」
「……」
「……」
なんとも言えない、気まずい沈黙が流れる。
一人の警察官は、防犯ブザーを鳴らした少年に背丈を合わせてしゃがみ、優しく事情聴取をしていた。
「お兄ちゃんと、どんなお話をしていたのかな?」
「あめだまをくれるって話~」
その言葉を聞いた、もう一人の立っている警察官が、鋭い目つきでぼくを見る。
いやいやいや! 飴玉あげようとしただけだからね⁉
変なことは言うなよ、少年!
「どうして、飴玉をくれるって言ったのかな?」
「ん~、忘れた~」
……その回答は、ギリギリ及第点にしておこう。
「そうか」
警察官は静かに頷いた。
どうやら、変なこと言われて、最悪な展開になる世界線は避けられたみたい。




