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第29話 つゆちゃんの前での駐輪葛藤

 今、決断せよ、自分! 自転車か、交通機関か、それが問題だ!


 うーん……うーん……よし、決めた!


 自転車だ!!


 やはり無駄にお金がかかった場合、嫌すぎる!


 最悪、自転車を押しながら電車に乗るという荒業だってある!


 ということで、早足で駐輪場まで走り、自転車を引っ張り出した。


 そして、自転車を押しながら、全力の早歩きで副会長一行に追いつく。 


 尾行を続けていると、副会長はショッピングモールに入る。それに続いて追随する親衛隊たちがショッピングモールに入った。


 ガーン!! めちゃくちゃ想定外だった!


 一般の生徒たちって学校帰りにショッピングによることってあるんすか?


 自分、いつもまっすぐに学校に帰っていたから、学校帰りに店に入るなんて選択肢になかった……


 ショッピングモールの正面入り口付近で自転車を持って佇む。


 副会長が店の中に入ってしまったよ。早く自転車を駐輪しないと。


 キョロキョロと周辺を見ていると、駐輪場はあった。


 安堵したのも束の間、その駐輪場の看板に、恐ろしい文字が目に入った。


『30分100円』


 お金かかるやないかーい!!!!!!!


 ダメだ、ここに止めると無駄金が発生する! 嫌だ! 絶対嫌だ!


 どうしよう……他に駐車場は……


 おっ⁉


 道路の向かい側にコンビニエンスストアの看板を見つけた。


 あそこには駐輪場はあるかなー?


 お、あった、あった。


 遠くからでも何個か自転車が止まっているのが見えた。


 よし、あそこに止めよう!


 コンビニエンスストアに向かいながら歩く。


 もちろん、コンビニで何も買わないのに、駐輪場だけ無断で利用するのはマナー的にどうかっていうのは、百も承知だ。


 ただ、ここのコンビニの店長さん、分かってほしいんだ。


 ぼくは今回の駐輪の為だけにお金を払いたくないんだ‼


 ここにちょっとだけ自転車を止めさせてもらう代わりに、クラスの子にここのコンビニ商品をPRして500円以上は買わすから、それで許してほしい。


 それに、バレなければ誰もお咎めはしないし。


 この行いは未来永劫、ぼくの記憶の中に残るだけだ。


 それから、コンビニ広報部として500円分、精一杯に働きます、置かせてくださりありがとうございます、と念じながらコンビニに頭を下げて駐輪場に自転車を止めた。


 そして、安堵のため息をつき、後ろを振り返った、その瞬間。


 ぼくは固まった。


「あ……」


 そこからわずか5メートル先に、下校中であろうつゆちゃんと、そのお友達が歩いていた。


 そして――つゆちゃんと、目が合った。


 あ、やばい……無断駐輪していることがバレたかも……


 歩きながらもつゆちゃん、こっちをずっと見ているよ……


 うわ! しかも、その目線を追ってお友達がこっちに顔を向けたよ!


 とりあえず、つゆちゃんに頭を下げる。そして、向こうも頭を下げる。


 このまま無断駐車をしたまま副会長を尾行したら、つゆちゃんはぼくのことをどう思うのだろうか?


 一度、真剣に考えてみよう。


 『さとしさん……コンビニに用もないのに無断で駐輪なんてする人だったんですね……』


 『さとしさん、そんなちっぽけなことでお金をケチるなんて……正直、幻滅です!』


 む、む、む、む、胸が、胸が苦しい!


 自分の胸のあたりを思わず抑える。


 これは、ものすごいダメージだ。


 つゆちゃんに幻滅されるなんて、東京湾に沈められるより辛いかもしれない!


 そうだよ! 自転車は、本来止めるところで止めないと!


 無駄金とか言ってちゃダメだ! 100円なんて、つゆちゃんのキラキラした瞳に比べたら、塵芥みたいなものだ!


 ていうことで、ぼくはすぐに踵を返し、自転車を持って、足早にショッピングモールの方へと歩き出した。


 あ、そうだ、一つ忘れていた。


 ふと立ち止まり、もう一度コンビニの方へと振り返った。


 心の中で、こっそり呟く。


 コンビニの店長さん……ごめんなさい。500円分の広報活動は、今回は無しでお願いします!



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