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第23話 : 東京湾の危機と偽りのカップルの行方

 …………ん~、絶対に発言ができないやつ~。


 ファンよりも、たちが悪いやつがきちゃったよー。


「あー、そうなんだ……」


「なんか、言いたそうなことがあるように見えたが?」


「いや、そんなことはないよ」


 とりあえず、椅子にロープぐるぐる状態になってるから、これを何とかしたいんだけどなー。


 もう話し合うことは無いと思うし。


 辛そうな理由が分からないって答えたんだから、帰ってもいいと思う。


「じゃー、聞きたいことはもうないよね? ということで、このロープ解いてくれない?」


 壮馬は左手をビーンと伸ばしてストップのポーズをとる。


「まて」


「あ、うん」


 何だよ、まだなんかあんのかよ⁉


 しばらく沈黙が流れる。空き教室特有の静寂が、異様な緊張感を煽る。


 やがて、壮馬が口を開いた。


「桃香ちゃんはおまえのことが好きなのか?」


「普通に嫌われてるけど?」


 即答。


 これは事実だ。


「そうか。で、おまえは桃香ちゃんのことが好きなのか?」


「いや、別にー、好きではない。むしろ、嫌いではある」


 これも事実。嫌い以外の感情はない。


「そうか」


「う、うん」


 なんだったんだろうか、今の質問は?


 なにがしたいんだ?


「俺、思うんだけどさー。おまえが桃香ちゃんと付き合ってるから辛そうにしていると思うんだ」


 ……まぁ、それは、一理ある。偽装とはいえ、嫌いな相手とカップルになってるわけだし。


「嫌いな人と付き合うから辛くなる。だから、おまえを東京湾に沈めた方が桃香ちゃんは苦しまなくて済むんじゃないか?」


「まてまてまて、なんでそういう話になるの⁉ なんでそこでいきなり東京湾に沈める結論に至るの⁉ 副会長がぼくのことを好きだったらセーフだったの⁉」


「それは……羨ましすぎるから東京湾だな」


「どっちもアウトじゃねーか!」


「ていうことで、大人しくしろ」


 壮馬は手をぼくの肩に手を置く。肩から感じた手の感触はごつかった。細身ではあるものの、鍛えているんだなってすぐに分かる。


 まぁ、見た目からしてスポーツマンだからな。


 この人ともしも喧嘩をしても、運動をしていないぼくはすぐに負けてしまうだろう。


 ……ていうか、この状況で、肩に手を置いて、何をするつもりだ⁉


 まさか、これから本気で東京湾に沈める準備でもする気か⁉


 めっちゃくちゃ怖いんですけど‼


「ちょっとまった! もしも、今、ぼくに東京湾に沈めたら、ぼくに精神的苦痛を味合わせれないぞ!」


 言い訳としてはどうかと思うが、実際、焼肉団がぼくを焼肉にしなかったのは精神的苦痛を与えるために今は放置していると聞いた。


 この言い分は最善といえよう。


「確かにみんなそう言って、おまえに何も手出しはしないけど、俺としては桃香ちゃんが苦しんでいる様子を見たくないから」


「お、おう、優しい心ですね」


「だから、東京湾に——」


「だから、何で結論がそうなるの? 別の理由で苦しんでいるかもしれないじゃないか!」


「別の理由って?」


「そ、それは……なんかあるんじゃない?」


「ないんだな」


「まって、まって、まって! あるから!」


「どんなこと?」


 どうにかして、言い訳を考えなくては。


「実は副会長は苦しんでいるようではなくて、悩んでいるだけだと思う。ここだけの話なんだけどぼくたちはカップルあみだでカップルになった偽りのカップル」


「知ってる」


 知ってんのかよ! 


 どこまでリサーチしてんだこのガチ恋勢!


「……だから、副会長はぼくとどうやって別れられるか考えていていて——」


「……つまり、別れられなくて苦しんでるってことか。東京湾に——」


「まてまてまて、最後まで話を聞いて!」


 壮馬は頷き、ぼくは話し続ける。


「今、ぼくたちはその『偽りのカップル』を解消するために、カップルあみだのルールを新たに作り直そうとしてるんだ!」


 これは副会長との選挙の話に絡めた、本当の話だ。


「新しいルールができれば、副会長はぼくと別れられる! しかも、それだけじゃない! 他の偽りカップルたちも、円満に別れることができるんだ! そうなったら、それぞれ別れた人が、他の人とお付き合いできるチャンスが生まれる! 多くの人がハッピーになれると思わないか⁉」


「ほう、なるほど」


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