第20話 : 異常なクラスと会長への決意
「それでは、HRを再開するざます」
えぇ⁉ 再開しちゃうのー⁉ 待って待って!
あいつ、あのままだと絶対死ぬって! 治療とか! 保健室とか!
――って、あれ?
みんな、何事もなかったかのように平然と前を見ている。
まって、みんな! 後ろの瀕死状態の子が見えてないの⁉
今にも死にそうな人がここにいるよ⁉
あ、でもつゆちゃんだけは、心配そうに一丸を見ている。
その時、真ん中の席にいる会長が静かに手を上げた。
「どうしたざますか、星川君?」
「先生、古賀君を保健室に連れて行ったほうがよろしいのでは?」
古賀君とは後ろで倒れている古賀一丸のことだ。
「大丈夫ざます。その子は倒れるのに慣れているざますから」
倒れるに慣れるってなに?
そんなことあるの?
あんな瀕死状態で倒れることに慣れる人なんて聞いたことないんだけど。
「そうですか、分かりました」
えー⁉ それで納得するの、会長?
全体を見回すと、みんなも頭を頷いて納得しているようだ。
なんだこのクラスは……
いや、窓側の一番後ろの席の子、つゆちゃんだけは納得していないだろう、と思ってパッと顔を向けるとつゆちゃんはなるほど、とすっきりした顔で頷いていた。
つゆちゃんんんんんんんんん⁉
どうしたんだ、つゆちゃん! そこは納得してはいけないところだぞ! どう考えてもおかしいだろ! 瀕死のクラスメイトを前に「慣れてるから大丈夫」で納得するクラスがどこにあるんだよ!
……と、心の中で全力のツッコミを入れながらも、ぼく自身も結局、一丸を保健室に連れていく素振りさえ見せていないんだけどね。
「それでは、改めてHRを再開するざます」
かくして、後ろで瀕死のクラスメイトが倒れているという異常事態の中、HRは再開された。
マム先生が「1年間共に過ごす尊いクラスメイトざます」と話しているのを聞いて、ようやく目の前にいる異様な集団が、今日からぼくと1年間を共にするクラスメイトなのだと、脳が受け入れ始めた。
つまり、会長も、このクラスなのだ。
もし会長がクラスを間違えていたなら、あのマム先生が「あなた教室を間違えているざます」と指摘しているはず。それがなかったということは……間違いない。
――はぁ……なんでよりによって会長と同じクラスなんだろう……
ぼくは、会長がこのクラスにいるという事実に、心底驚いていた。
なぜかといえば、この学校には特進クラスというものがあって、学校全体で会長は特進クラスに行くだろうと言われていたからである。学校全体で言われていたんだよ?
それなのにこの普通の文系クラス。
一体全体どういうことなんだ?
なにか深い理由でもあるのか?
思わず、頭を抱えたくなる。
ただ、会長がここにいることがショックなのには、もっと個人的な理由がある。
それは、つゆちゃんと同じクラスということだ。
2か月前のあみだでカップルが成立して、つゆちゃんから『ぼくと副会長はお似合いですね』と言われて心が折れてからも、つゆちゃんと会長が一緒にいるところをほぼ毎日、見た。
特に昼食の時間は会長がぼくのクラスに毎Rafael来て、照れながらつゆちゃんは奴と食事をしていたんだ。
その時のぼくの気持ちはナイフで心臓をえぐられるぐらいの苦痛だよ?
それが2年生になってから毎日続くということだ……そんなの耐えられそうにないよ、つゆちゃん。
しかもだよ! 同じクラスっていうことはもしかしたら、すべての休み時間なんか会長と一緒に過ごす可能性があるじゃんか!
絶対に許せん!
黒髪天使つゆちゃんはぼくの将来の彼女なんだぞ?
会長めー、つゆちゃんになんか変な行動なんかとってみろ、絶対に阻止してやる!
にっくき男をギリギリと睨みつけた後、目線を窓側の一番後ろの席に向ける。
黒髪ロングストレートに色白の肌、真剣にHRの連絡事項を聴く姿はこの世とは思えないほどの美しい人。
つゆちゃん……
待っていてね、つゆちゃん。ぼくが会長から君を守るから。
そんな決意を胸に、ぼくは副会長と選挙について話し合うことを静かに決めた。もちろん、すべてはつゆちゃんとお付き合いするために、だ。




