第11話:地獄の規約
つゆちゃんカップルをぶち壊す決意をしていたぼくは心を燃やしていた。
「よし、それじゃー、カップルあみだの恋人同士が別れる項目を入れるぞー! さっそく申し出をしよう!」
「ちょっと待ちなさい」
「え、どうして?」
「その項目を入れるのはそう簡単じゃないわ」
「え、生徒会に問い合わせして、すぐ規則に適用してくれるんじゃないの?」
「そんな簡単じゃないわよ。それに、頻繁に規則が変わったら参加者が大変でしょ。だから、年に回ルール変更があるの。もちろん、途中で変更されることはあるけど、滅多にないわ」
「あー、そうなんだ」
副会長はため息をついた。
「規則を変えるのが簡単じゃない理由は生徒会に申し立てした後、普通なら生徒会役員全員と議論したうえで規則の変更と導入があるの。でも、今回はその項目を入れるために選挙をしないといけないのよ」
選挙? 選挙なんてしないといけないの?
わざわざ一個の項目を導入するためだけに?
「副会長、なんで今回は選挙をしないといけないの?」
「正規の方法、つまり生徒会役員と議論してその項目を導入しようとすると、まず間違いなく通らないわ。なぜかといえば、会長が途中でカップルが別れるのは大反対をしているからよ。そうなると、どんな項目だろうと会長が拒否するから通らないわ。だから、普通じゃないやり方で導入するしかないの。それが選挙ってわけよ」
「選挙以外の方法で導入することはできないの?」
「……ない……無いわね」
なんで歯切れが悪いんだろう?
まぁ、いいや。
「ふ~ん、そうなんだ」
それにしても、さっきの話を聞く限りでは会長の権限がものすごく強いな……
でも反対に言えば、会長が賛成してくれたら別れる項目を導入できるってことじゃないか?
「副会長、さっきの話で気になったことがあるんだけど」
「なに?」
「会長が賛成してくれたら導入できるってこと?」
「……そうね。導入しやすくはなるわね」
導入できるじゃなく、導入しやすくね……
「ならさ、会長に頼み込んで賛成させようよ」
「それができたら苦労はしないわよ!」
「もっと苦労したら大丈夫だって」
「嫌よ! そもそも選挙を実施させること自体、相当に難しいことよ。奇跡に近いわ。わたしだから選挙を実施させられるんだからね」
「そ、そうなんだ。すごいんだね、副会長」
とりあえず、褒めておいた。
たくさんの気苦労があったんだろう。
「ただ……この選挙は相当大変よ」
あれ? てか、選挙なんかしていいの?
カップルあみだって学校には秘密にしているんじゃないの?
学校の先生がカップルあみだのことについて話しているところなんて見たことがない。勝手に生徒会役員で運営をしているように思ってるけど……そんな大々的に選挙とかしていいのかな?
そういう意味で選挙は大変だと言っているのだろうか?
「確かに選挙は大変だ。学校に隠れて選挙なんて難しいよね。バレたら大ごとだ」
「……ん、まぁそうね」
なんだ、この歯切れの悪い返答は……
自分がそんな風に思っていると、即座に副会長が話を進める。
「大変なのはそこじゃなくて、票を集めるのが大変なのよ」
それって大変なのか?
だって、ぼくたちみたいに別れたいカップルあみだの参加者はいっぱいいるのでは?
さらに言えば、カップル解散は任意でできるってなると、ずっと付き合いたいと考えている参加者も別に否定することでもないから票なんて簡単に集められそうだけど?
どうして票を集めるのが簡単じゃないって言ったんだろう?
「票集めなんて簡単じゃないの? 選挙の仕組みが複雑だから票集めが大変ってこと?」
「仕組みはいたってシンプル。カップルあみだの参加者の票を一票でも多くもらった方が採用されるわ」
ほう、カップルあみだ参加者だけが投票するのは当然か。
選挙とかいうからワンチャンこの学校のすべての生徒の可能性もあるとちょこっとだけ思っていたが、それはなかったようだ。
「なおさら、票なんて簡単に集められると思うけど? ぼくたちみたいに別れたい人はたくさんいるだろうから」
「普通ならアンタの言う通り、簡単に票を集めることはできるわ。だけど、選挙の相手はわたしと反対意見の人たちとの勝負。つまり、会長が相手ってことよ。会長はどんな状況でも圧倒的な力を見せて敵を屈服させるわ」
「さすがに、言い過ぎなんじゃ……」
「そんなことはないわよ、会長のすごさをいつも見てきているわたしだから分かるわ。この選挙だって負ける可能性が非常に高いわよ。どんなにいい条件だとしても……」
「そうか……」
そこまで不安に思わなくてもいいのでは、と考えるけど、副会長がここまで言うのであればそうなのかもしれない。
まだ、実感がわかないんだけどね。




