①少年
① 少年
早足でダエィの城から離れると、王城下街へ出ました。街の中心部には騎士が集まる訓練所や修道女が集う教会。それらの人々に解放された図書館があります。勿論ピァのような孤児や階級の低い者には与えられない場所です。
ピァは息を整えると、騎士訓練所の門に立つ立派な騎士の像を見上げました。
父に似ていると思いました。
凛々しく馬に跨り、剣を掲げる姿は懐かしく、父を思い出させます。
ピァが幼い頃消息を絶った父を、未だピァはどこかで会えると信じていました。
あの勇敢な父が、亡くなるはずがないと。
ピァは荷物を持つ手に力を込めると、北を向き歩き出しました。
想いに耽り、少し油断して居たのかもしれません。背後で低くしゃがれた声がしました。
「あら、ピァちゃんじゃないの。
お久しぶり。」
ピァは振り返らず走り出しました。
騎士訓練所から出てきたのは、間違いなくゲス、ダエィです!
シノァを蛇のように狙っている、あの汚い男です。
「アイツを捕まえて!」
金切り声が響き、馬の蹄の音が迫ってきます。彼は騎士訓練所で騎士として従者を何人も従えていました。まともに逃げていたのではすぐに捕まってしまいます。
ピァは馬の通り辛い裏路地に逃げ込むと、建物の影に身を潜めました。
昔住んでいた街です。貧民街の裏路地は庭のようなものです。
現に目の前には地下道に通じる階段があります。最悪の場合そこに逃げ込めばいいのです。
メインの通りから、数名の騎士たちが裏路地に迷い込みます。ダエィの部下は何故か金の混じった髪の者を集めているようで、キョロキョロと挙動不審な様子からすぐにわかります。
従者の人数や背負っている荷物から、地下に隠れた層が良さそうと判断したピァは、地下道の入り口に彼らの裏手からまわりました。
小さな赤い木の扉を開ければ地下への階段へつながるのですが、いつものそこの前には見慣れぬ老人が長いパイプを加えて座っていました。
ピァは息を整えて、老人に話しかけます。
「追われていて、地下に潜りたいんだ」
老人は垂れた目の端からピァをみると、今日は時が悪いとその道を塞ぎます。
背後の足音に焦り、ピァは髪を振り乱しました。日に当たった髪が金に光ります。老人は潰れそうな目を少しだけ開きました。そして
「金のライオンにご加護を」
と呟き、焦る彼女の前の赤い門を先ほどとはうってかわってあっさりと開けました。
「あ、ありがとう」
笑顔で答えると、ピァは荷物を前に抱え地下道に降りました。
階段の先は下水が通り、両脇に狭い道が続いています。ここは入り組んでいて迷えば暗闇に出られなくなります。
続く




