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第4依頼 旅館の1室に潜む謎

「なぁ、ちょいとええかい?」

ある日の昼、凪沙さんが話しかけてきた。


「どうしました?」


「あのなぁ、旅館のとある一室を泊まった家族の娘子がな―――」


話によれば、春休みシーズンに泊まっていた家族の娘が、昨日学校の屋上から飛び降りて死んだとニュースで知ったとの事。


泊まっていた時には、特に不自然な事は無かった。

家族仲も良かったし、学校も私生活も不自由ない、と話していた。


凪沙さんが気になったのは、『泊まっていた部屋』の事だ。


以前からその部屋では、度々物音がしたり、誰も居ないのに部屋が荒らされていたらしい。

もしかしたら、一種の呪われた部屋なのかも知れない。

不可解な事は最近なったらしいが、彼女の死で確信した。


……何かがあるに違いない。


「分かりました。今日の放課後、そちらにお伺いします。」


▪▪▪


その日の放課後。


「呪われた部屋って、怖いですよね……。」

うるしがそう言った。


にちかは、神社の留守を頼まれたとの事で、今回はうるしと一緒に行動する。


「それは大体は地縛霊から亡霊(レイ)になったパターンだけど、凪沙さんの旅館はそんな霊に取り憑かれるような話は聞いた事無いよ。だから、()()()があるんだ。」


うるしは「成る程」と言わんばかりに頷く。


黒薙屋旅館へ着いた。

正面門に、凪沙さんが出迎えていた。


「お待たせしました。」


そう言うと、凪沙さんは頷いた。

「……では、こちらにどうぞ。」


旅館の奥地に向かっているようだ。


「……黒薙さんの旅館って大きいなぁ。」

うるしはそう呟く。


松葉市の郊外にあり、庭園や『(はなれ)』の部屋を含めて大分広い敷地だ。

うるしの言う通りだ。


「ここです。『(はなれ)』の1つ、『櫻乃木(おうのぎ)』と呼ばれる部屋ですわ。」


▪▪▪


部屋に入った。

至って普通の旅館の部屋だ。パッと見、そんなに怪しいのは無さそうけど。


(………あれ?)

霊力の波長が、亡霊(レイ)の物とは違う。


その時、うるしが大きな柱の下部分を指した。

「あれ、これ何でしょう。」


そこには、謎の御札が張ってある。

(ケハイ)』がする。これが原因なのかな?


「あれ、見たこと無ぃ札やわ。……気付かなかったなぁ。」

凪沙さんですら気付かなかったのなら、従業員ですらも……


『……なぁ、それ気がついたんやろ。(はよ)ぅ取ってくれん?』

そこから、声がする。


(……えっ?)

まさか、その御札が喋っている?


『御札が喋る訳無いやん。と言うか、声が聞こえている、()()()。祓者族やろ。一応、呪文唱えてみ。……最初の部分は抜きにしてな』


心の内が読まれている?

……ってあれ?祓者族の事、知っている?

いやいや、それは後にして。呪文は『(スガタ)』ので良いのかな。


【汝ノ (スガタ)ヲ 見セヨ】


そこに姿を見せたのは、白装束を身に纏ったおかっぱの少女だった。


▪▪▪


霊力が暴発するかも知れないので、うるしと凪沙さんには部屋を出て貰った。

謎の御札を取ったが、一先ず何も起きず。

……御札(これ)はお父さんに見せよう。


『ふう、楽になったわ。ありがとうな』


その子が言った。

気になる事が沢山あるな。


『あたしゃ、幽子と言うん。……聞いた事無いかい?「死期霊」と言うものを』


思い出した。


『死期霊』とは、死期が近い人に現れる霊の事。

地縛霊の派生で、死期魂(しきたま)を喰うとされる。

『常人』の魂を喰ったり、一定数以上の死期魂を喰うと、霊界から注意される。

その注意を5回以上受けたり、『怨念』の強い人の死期魂を喰うと「亡霊(レイ)の対象」とされ、強制的に成仏をしなければならない。

(道理で、祓者族の事を知っていると思ったが)


幽子(かのじょ)自身は、至って()()()を越えていない。

『死期が近い人』にしか起こらない事だから、常人にまで起こるのはどうもおかしい。


『あのな、信じてくれるか分からんけれど……』


どうやら、幽子は『違う土地から来た』のだ。

数ヶ月に何者かに連れ去られて、気がついたら『櫻乃木』の部屋に居たとのこと。

御札に縛られて、そこから霊力が抜かれるような感じがした。


その最中、霊界の御告げから、死期とは関係ない女の子 (依頼のキッカケになった娘子) が亡くなったとも聞いているみたいだ。


『霊界の主様には、その時「貴女の責任は在らず」って言われたから、安堵したんやけどな。……あたしゃ、この事件を起こした犯人が許さへんわ』

ふと、そう幽子が言った。

……霊でも、そう言う事があるんだな。


『なあ、あんたの力になりたい。助けて貰ったお礼を兼ねて……ええか?』


「じゃあ……お願い、出来るかな。」

幽子は、嬉しそうに頷いた。


幽子を助けた事により、この後は何事も無かったと凪沙さんから聞いている。


▪▪▪


その日の帰り道。


うるしに、さっきの話をした。


「……で、幽子さんって言う幽霊が近くに居るんですか?」


「うん。」

私の後ろに、服の袖をつまみながら付いてきている。


『そのうるしって子、面白い波長するなぁ。あたしが移ろうとも、身体は自由に動かせるんやろ』


……凄い、お見通しだ。


『まあ、死期霊の中でもえらい長生きしとるから、波長は分かりやすいもんや。あんた……なつちも、なかなかの『道導(ハライ)』の腕を持っとる』


「私なんか、まだまだ見習い師だよ?……って、変なあだ名付けないで。私の名前は夏帆よ、な・つ・ほ!」


『ええやん。可愛いやろ?なつちー、なつちー』

幽子はゲラゲラと笑う。


「もぉー……」


「……あの、市葉崎さん?ま、周りから変な目で見られるんですけど。」


うるしの言葉で我に返った。

しまった、私以外は見れないんだっけ。


痛々しい目で見られてる……


「は、早く帰ろうっ!」


▪▪▪


あの謎の御札に関しては、お父さんは見たこと無いモノだという。

仕事の傍ら、にちかの父である知三さんと一緒に調べてくれるみたい。


誰が、何のために仕組んだ事なのか。

それは、また追々に分かること……なのかな。


▪▪▪


幽子


自作小説「幽霊の幽子ちゃん」より、友情出演。

姿は、夏帆にしか分からず、名前は「なつち」と呼んで懐いている。

にちかとうるしは、下の名前で言う。

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