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駅にいる者

作者: 醤油煎餅

初のホラーものです。見て、評価をくださると嬉しいです。

 何処かの駅、そこには一人のサラリーマンが疲れた顔でスマホと向き合って文字を打っていた。

 彼は三上伸介。仕事の企画がラストスパートなので、残業もしなくては間に合わない。しかし、残業続きで彼の方は参っていたため、上司が帰宅命令を出して帰らせたのだ。


「畜生、あのくそ上司。疲れてそうなら、休ませろってんだ」


 そんなことを思いつつも、休めないのは彼も重々承知している為、また明日からの残業の日々を覚悟している。

 伸介の家の近くの駅と会社近くの駅は程近く、彼は入社してから一度も遅刻したことないのが、ひそかな自慢だった。


「彼女もいないし、貯金もないしで何もできないよな」


 伸介がそんな事を呟いているとアナウンスが流れてきた。


『~~~♪~~~♪』

『まもなく、各駅停車、◇◇行き~、◇◇行き~。黄色い線の内側までお下がりください』


 伸介はいつもの通りに、スマホで仕事のスケジュールを調整しながら画面を見て人の流れを感じながら列に並んだ。彼は待っている少しの間もスマホに集中し、メールを処理している。

 電車の近づく警笛が聞こえると、生暖かい風が感じる。独特な風切り音と、風圧を感じ停車時のプシューと言う気の抜けるような音が聞こえてくる。

 ようやく来たかと、溜息を吐いて、帰った後の晩酌に思いを馳せる。

 乗客は次々と入り、最後尾にいた伸介も扉に入る。


























「おい! あんた、何してんだ!」


 いきなり、誰かに左腕を掴まれ伸介は困惑する。侵攻を阻まれ、振り向くとそこには誰もいなかったので、さらに困惑する伸介。伸介は周囲を見渡すとそこにはいつもと変わらない駅の風景で、周囲の客がいきなり挙動不審な行動をした伸介の事を訝しそうに見ていた。

 伸介は確認するようにホームの方に向き直る、そこには今さっき着いたばかりの電車が止まり、他の乗客が電車の中に入っていく光景が写っていた。

 伸介は電車に慌てて飛び乗り、空いていた席に座る。


 ふと、ホームの方を見ると、そこには鬼のような形相で伸介の方を恨めしそうに見ている一団がいた。しかも、彼らは彼が通る道を囲むように、立っていた。

 つまり、彼らは伸介を誰の目にもふれない様にして、事故に見せかけ殺そうとしていたのだ。しかもそれは、この世ものではないナニカが。

 その事に気付いた伸介は、体を震わせて恐怖した。


 伸介が家に帰り、ようやく安心したところで、彼が掴まれた左腕を見てみるとそこには人の手で掴まれた、赤黒い跡がついていた。それに気付くと伸介は、また恐怖して身震いした。

 あのまま、この跡を付けた者が止めてくれなかったらどうなっていたのか、さらに恐怖し、そのまま何もせずにベッドに入って就寝した。


*  *  *


 次の日。昨日の事を思い憂鬱になりながらも、濡れた食器を手に取って朝食の準備に入る。朝食の後に、スーツに着替え会社に行く準備を完了させ家を出る。

 行きの為の駅に着くと、溜息を吐きながら列の最後尾で電車を待つ。昨日の事を思い出し、スマホを見ることは無く、真っすぐと前を向き電車が来るのを待っていた。

 アナウンスが聞こえ、電車の警笛が聞こえてくる。しっかりと電車が付くのを確認すると電車に続々と乗り込む、満員の乗客に空いていた席を幸運だと思いそこに座る。

 すると、横にいた乗客、前にいる乗客が伸介の体をいきなり押さえつける。


「ちょっ! あんたら、何やってんだ!」


 それに驚愕して暴れようにも、伸介は抵抗が出来ず動けない。何とか顔だけでも見ようと顔を掴んで引き寄せてみると、まともな顔をしていなかった。腐敗し、爛れていた。誰がどう見ても、生者のようには見えない。


「やめろ! 何だ! 何だってんだ! お前たちぃ!」


 伸介はヒトの、肉の波に飲まれ、抵抗のまもなく電車の中で消えてしまった。


 のちに廃線の終着駅から伸介の遺体が見つかった。伸介の遺体には体中に無数の手形が付けられていた、その手形はすべて同じ人物からつけられたように同一のものであった。


*  *  *


 はてさて、駅にはこんな噂がある。霊は生者を容赦なく、そこから突き落として殺す。しかし、たまにそれから助ける霊がおる。助けられても要注意、捕まれたのは、右腕? 左腕? 右腕ならば一安心、左腕なら要注意。それは、霊が取り付く証。駅はヒトが乗り降りをする場所。生前を思い出し、亡者が(電車)に乗り移る。




 


 

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