KANSEE
スタジオに入って、制作に挨拶をする。
夜中だが、複数の制作進行がいた。
俺はアニメーターだ。
今年で40になる。
自分の席に座って、PCを起動した。
アニメの絵を描きながら、ユーチューブとか映画を見ていた。
最近のお気に入りは、監視カメラをを見ること。
とあるIT企業が開発した監視システム。
名は「KANSEE」。
基本は無料。
最初に、CMが流れる。だから、無料。
ランダムの場所を映した画面が9つ映って、監視をする。
監視をしてほしい人たちが、IT企業に頼んで申し込む。
IT企業は監視カメラをつけて、一般人に監視をお願いする。
そして、俺は今日も監視をしていた。
場所は、日本だったり、海外だったり。
気に入らなければ、ボタンを押して場所を変える。
その度に、CMが流れるけど。
ん?
そこは野菜畑だった。
大人の男性たちが三人、明かりをつけずに、野菜を取っている。
野菜泥棒か?
俺はすぐさま通報した。
画面には警備会社の車が映り、男たちが車に乗って逃げて行った。
後日。
IT企業から連絡があった。
謝礼と野菜農家からお礼を送りたいと言われた。
俺はスタジオに送ってほしいと伝えた。
スタジオには、色とりどりの野菜が段ボールに送られてきた。
「田中さん、この野菜どうしたんすか?」
制作の男に聞かれて、ことの顛末を話す。
「まじすか、田中さんヒーローじゃないすか!」
「だろ」
野菜を冷蔵庫にしまって、次の日、スタジオのみんなで食べた。
マヨネーズ、ドレッシング、そして、頼んだ熱々のピザ。
濃厚なピザと健康的な野菜がハーモニーを奏でた。
家に帰って、ベットに横になる。
野菜の入った段ボールに手紙が入っていた。
『おかげで、大事な野菜が守られました。ありがとうございます』
達筆な字で書かれていた。
アニメーターをやっていて、人の役に立てることはないと思っていた。
家宝にしよう。
夜が明るくなったが、俺は寝る時間だ。
俺は横になって、あの時のシーンを思い出した。
野菜泥棒が逃げていくところ、アニメで使えないかな。
そんなことを考えながら眠りについた。